竹島を政治利用する「タマネギ男」とは全然違う…最悪の支持率でも韓国大統領が"反日"に手を出さない理由
■日韓連携は日本のためにもなる 不評を買っていた尹大統領の態度にも、変化が見られる。4月22日には尹大統領が久しぶりに記者会見に応じ、29日には共に民主党の李在明代表と会談、野党と対話していく姿勢を示した。さらに5月9日には、批判の対象になりがちだった夫人の疑惑について謝罪までしている。 こうした一連の行動により、世論調査で一時は17%もの人が支持しない理由に挙げていた「コミュニケーション不足」が、冒頭で触れた通り9%へ低下している。 今後、尹大統領自身の変化や景気の改善に加え、産業界における日韓の協力関係が深まり、その成果が尹政権の支持につながるのであれば、3年後の大統領選での与党「国民の力」の勝利も視野に入ろう。韓国における保守政権の継続が、安全保障の観点から日本にとってメリットが大きいことは、前の革新政権時代の状況を振り返れば明らかである。 米国がトランプ政権となれば、その意味は一層重要になる。同盟国との連携強化よりも一対一でのディールを好むトランプ大統領にとって、日韓の連携は自国の外交戦略において障害以外の何物でもない。中国にとっても、同様に日韓の分断が外交交渉において自国の立場を優位にするだろう。 日本としては、一部で語られる感情論を横に置き、激変する国際社会において何が自国に有利な状況を作り出す要素となるのかという観点で、日韓関係の重要さを認識すべきであろう。 ---------- 武田 淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研社長・チーフエコノミスト 1990年3月、大阪大学工学部応用物理学科卒業、2022年3月、法政大学大学院経済学研究科修了。1990年4月、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。第一勧銀総合研究所(現みずほ総合研究所)、みずほ銀行総合コンサルティング部などを経て、2009年1月、伊藤忠商事入社、マクロ経済総括として内外政経情勢の調査業務に従事。2019年4月、伊藤忠総研へ出向。2023年4月より現職。テレビ東京「モーニングサテライト」でレギュラーコメンテーター、日経QUICK東京外為コメンテーター。 ----------
伊藤忠総研社長・チーフエコノミスト 武田 淳