セフレの「フレ」の部分すらない… マッチングアプリのリアルを描く共感必至の実録マンガ【書評】
体調不良などもちろん嘘で、自宅で性行為しようと誘ってくるのだ。「分かった! とりあえず俺ら付き合お!?」という17人目の男性。性行為をするためなら、その一瞬だけでも付き合おうとする。
性行為に同意させるためだけの「付き合おう」は完全な「嘘」であることを証明するかのように、男性は行為後のチアキを放置する。まるで道具のように女性を扱い、目的を果たした後はもう用なしだといわんばかりの態度なのだ。思わず家を飛び出したチアキは、散歩中の犬と自分を比較し「大切にされて生きてなさ過ぎだわ」と気づく。肌を重ねる瞬間は寂しさを埋められるかもしれないが、終わった後の心の穴はますます大きくなってしまうのだ。
本作は、マッチングアプリの体験談だけではなく、チアキというひとりの女性の心の内面まで描かれた作品だ。マッチングアプリを再開する前は、友人の死もあり「自分に存在価値はない」と感じていたチアキ。しかし、アプリで出会った男性とのエピソードをSNSで発信したことがきっかけでマンガ家になることが決まり、その感情が変わっていく。作家として作品を作っていく中で仲間やファンをはじめとした「かまってくれる人」が増え、次第に寂しさを感じなくなっていく。
「生きるの趣味なんで」という男性に対し「あたしもソレ趣味にしようかな」と返すチアキ。寂しさを埋めるために知らない男性と性行為していた彼女の変化に安堵する。マッチングアプリを再開したころのチアキと同じように心にぽっかり穴が空いている人にこそ、ぜひ本作を読んでほしい。 文=ネゴト/ 押入れの人