取材歴13年「私の出会った個性派キャプテン」たち…叱咤激励型、調整型、高校・大学・社会人ですべて日本一の「殿堂入りキャプテン」も!【主筆・河嶋宗一コラム『グラカン』vol.8】
高校・大学・社会人すべて日本一を経験した福井章吾(トヨタ自動車)は殿堂入りキャプテンだ!
最後に、私が圧倒された“殿堂入り”と言ってもよいすごいキャプテンを紹介します。 それがトヨタ自動車にいる福井 章吾捕手(大阪桐蔭-慶應義塾大)です。高校、大学、社会人で、全国大会優勝を経験。大阪桐蔭、慶應義塾大では主将を務め、その能力の高さは各メディアから称賛され、多くの主将が「福井さんを見習った」という記事を多く見かけます。 大阪桐蔭時代の主将での苦悩を詳しく語ってくれたのは、慶應義塾大に在学していた2020年の12月です。当時について、このように振り返ります。 「新チームは夏の大会に出ているメンバーがほとんどいなかったので、一から見直すことから始めました。自分自身は後のことにして、まずはチームを最優先。技術面よりも、声かけや生活面などチームの内面を鍛えることを徹底させてから、試合の進め方、野球に対する根本的な考え方。しっかりしないといけないことを選手たちに話をしました」 なかなか思うようにいかない日々もあり、苦しかったようですが、西谷 浩一監督からは 「西谷先生から『とにかくお前がやるしか無い、キャプテンがやるしか無い』と日々、言われていましたので、それ以外にも毎日、僕のケツをたたくような熱い言葉をかけてくださって、それがあったからこそ新チームの期間はなんとか食らいついていけたのかなと思います」 同級生たちの選手たちは福井主将を支えようと7人の副将を設け、その1人が巨人にいる泉口 友汰内野手(巨人)でした。その後、福井選手の代の大阪桐蔭は、大学で主将5人、副主将4人と9人も大学野球部の幹部も出る世代となりました。 慶應義塾大の福井主将の姿はどこかソフトな感じがありました。学生コーチや、マネージャーとのやり取りを見ても、とにかく前向きな言葉をかけています。福井主将はその理由について次のように答えました。 「自分はチームの中でも技術が飛び抜けてあるわけではないので、キャプテンとして何ができるか考えたとき、チーム全員を鼓舞して、よい雰囲気を作ることにすべてを注ぐことかなと思っています。それを忘れずに、日々、気持ちをぶらさずに意識して取り組んでいます」 高校、大学どちらも全国制覇を目指す立場であるのは変わりないものの、慶應義塾大ではいろんな大人の考え方に触れることで、接しやすいキャプテンになっていました。それでも試合になると、全力疾走や全力のバックアップを心掛け、投手陣や、周りへの指示もしっかりしており、視野の広さも感じられました。結果として、主将として高校、大学を優勝を経験。 これまで素晴らしい主将は多くいましたが、実績面から考えて、福井主将は「殿堂入りキャプテン」という称号を授けたい思いがあります。 これからもいろんなチームを取材する中で、さまざまなキャプテン像を見つけていきたいと思います。