「ここは俺にあげろや!」高橋藍が怒声を浴びせた相棒セッターの選択…敵将も舌を巻いた驚愕プレーとは「あの上から打たれたら打つ手がない」
「ここは、俺にあげろや!」
だが、その善かれと思って打った手が、高橋の逆鱗に触れた。 20点を超えた終盤、1点を求めたい勝負所だったが、トスを上げる前に対戦相手が高橋への警戒を強めた姿が中島には見えた。たとえブロックが2枚、3枚来ようと「藍ならば決めてくれる」とわかっていたが、中島はあえて別の選手にトスを上げた。エースの高橋に上げるばかりでなく、こういう場面で散らすことも必要だと考えたからだ。 中島の思惑通り、相手の意表をつき、ほぼノーマークに近い状態で決まり、東山に得点が入った。見る角度を変えれば、評価に値するプレーだ。ただ、その直後、「健斗!」と自身を呼ぶ高橋の声が響いた。 「何であそこ、俺にトスを持って来うへんねん」「ここは、俺に上げろや!」 高橋にあったのは「勝負所は自分が決める」というプライド。余分な遠慮などいらない。中島が苦笑いと共に記憶をひもとく。 「たとえばシャットされた時も、僕はまず『ごめん、俺のトスが悪かった』と思うから、次はもっといい状況で確実に決めさせようと思うんです。だから次のラリーでも また藍にブロックが来ていたら、そこには上げず、別のところを選択する。でもそれが『違う』と。エースは、シャットされた時点で、どんな状況であろうと『クソ、次 は決めてやる』と思う。だからもう1本俺に持ってきてくれ、と藍に言われて。決めやすいようにとか、余計なことを考えず、託すべきところは託す。そうすれば藍は決めてくれる。エースの心理を藍に教えてもらいました」
敵将も舌を巻いた圧巻のプレー
中島とのコンビを確立した高橋は、ライバル洛南に打ち勝ち、ついに高校最後のシーズンで春高へたどり着いた。悲願の大舞台で、高橋はエースたるゆえんを存分に見せつける。 東山は初戦の前橋商戦から試合を重ねるごとに調子を上げていった。ただ、準決勝からは高校生にとってほぼ経験したことがない“5セットマッチ”。独特の高揚感や興奮も相まって、知らぬ間にフィジカルにダメージを受けるため、準々決勝、準決勝と進む頃には疲労もピークに達し、ほとんどの選手が疲弊していく。しかし、高橋だけは別次元にいた。 圧巻は、駿台学園との決勝戦。197センチの伊藤吏玖と188センチの金田晃太朗という大会屈指のツインタワーを意に介さず、高橋はその高いブロックの上からスパイクを打ちつけた。しかも、試合の序盤ではなく、2セットを連取した後の第3セットでのプレー。驚異的とも言える会心の1本に、敵将も「あの上から打たれたら打つ手がない」と舌を巻いた。
悲願の全国制覇から急ピッチで駆け上がる高橋藍
この大会、東山は「失セット0」という快挙と共に、初の全国制覇を成し遂げた。 時に仲間と衝突しながらも叶えた夢。有言実行を体現してきた高橋にふさわしい高校ラストゲームだった。 ただ、ここから急ピッチで駆け上がることは、まだ誰も知る由もない。当時の高橋に声をかけるなら何と言おうか。「君、もうすぐ日本代表に入るよ」「来年の東京五輪に出るよ」と言っても、信じてもらえないだろう。しかも、その後すぐに世界最高峰のイタリアへ渡るなんて、誰が想像できるのか。 わずか4年で世界は激変した。 <前編から続く>
(「バレーボールPRESS」田中夕子 = 文)
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