贋作疑惑の油彩画、所蔵元の県立美術館がX線などで分析…結論は今年度中にも
ドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンク(1889~1957年)の油彩画に贋作(がんさく)の疑いが持たれている問題を受け、所蔵元の高知県立美術館(高知市)は、真贋を見極めるための科学調査を本格化させている。今月には県外の専門家を招いたX線検査による真贋鑑定などを実施した。今年度中にも結論を出す方針という。(石渕譲) 【写真】贋作疑惑が持たれている「少女と白鳥」
贋作の疑いがあるのはカンペンドンクが手掛けた油彩画「少女と白鳥」(1919年)。県立美術館は1996年に名古屋市内の画廊から1800万円で購入し、各地の美術館への貸し出しだけでなく、昨年11月の開館30周年記念展でも展示してきた。
徳島県立近代美術館(徳島市)が6月、ドイツの「天才贋作師」と呼ばれるウォルフガング・ベルトラッキ氏の贋作リストに、「少女と白鳥」と同館所蔵のフランス人画家ジャン・メッツァンジェ(1883~1956年)作の油彩画「自転車乗り」が掲載されていることを確認。情報提供を受けた県立美術館は7月、贋作の疑いがあると発表し、調査を進めていることを明らかにしていた。
11月18、19日の2日間の日程で行われた科学調査には、油彩画などの保存修復に携わる京都大の田口かおり准教授も参加した。調査では作品の表面や裏面を、X線を使って分析する装置にかけ、絵の具に含まれる元素の種類を調査した。元素の種類や組み合わせがわかれば、制作年を特定する手がかりになるという。
また、捏造(ねつぞう)された可能性のあるラベルなども入念に調査した。田口准教授は「ベルトラッキがこれまで作品で使用した絵の具に含まれる元素を探していたが、今回の調査では明確に確認できず、今後の課題として持ち越すことになる」と説明。その上で「ベルトラッキの作品の基本的な成り立ちを考える上で必要な基礎情報が整理、取得できたので意義のある2日間だった」と述べた。
2作品の贋作疑惑については、ベルトラッキ氏が読売新聞社の取材に対して「私が描いた作品だ」と認めている。