Podcastの人気番組から生まれた「雑草食」本。緑が増える季節、散歩がもっと楽しくなる!
――ちなみに、雑草食に対する周りの反応は? Michi 雑草を食べていることを話すと、たいていびっくりされますし、引かれてしまうこともあります(笑)。でも、「本当に食べられるの?」と興味を持つ方もいらっしゃる。私が開催している雑草を食べるワークショップも多くの方にご参加いただいていて、好評です。 ――そこでは雑草を皆さんで調理するんですか? Michi そうです。みんなで草を摘みに行くところから始まって。食べられない雑草ももちろんあるので、観察したり確認したりしながら、持ち帰った雑草を料理して食べてみます。 ――おいしい雑草だけではなく、中にはがっかりしたものもあるのでは? Michi ありますね。夏の草で、アカザとかシロザと呼ばれる植物があって。戦前生まれの方はよく食べていたらしく、味も悪くないと聞いていたのでわくわくしながら食べたところ......葉の表面が粉っぽく、食感が悪くて、期待ほどではありませんでした。 あと、侵略的生物の代表格として名高いセイタカアワダチソウもゆでただけだとクセが強くておいしくはありませんでした。でも、しっかりアク抜きして香りづけに使うとおいしくなるんですよね。 ――調理法によって変わる? Michi そうなんです。雑草にも種類ごとに個性があって、香りが強かったり、味にクセがあったりするものがある。でも、適材適所、上手に使えば、どんなコでも工夫次第でおいしく食べられるのも雑草食の魅力のひとつです。 ――雑草食を始めてみて、変わったことはありますか? Michi 雑草を採集して食べるという経験を通して、自身に流れる狩猟採集民の血に目覚めたというか(笑)、内なるハンティング欲に気がつきました。雑草を集めていると、獲物を捕まえているような感覚になるんです! ――雑草採集は狩り、と! Michi 雑草を見つけるのってエキサイティングなんです。採集のとき、「これを見つけよう」と出かけていっても、目当てのものは見つからないことが多いんです。でも、別の種類の雑草が思いがけず見つかったりする。 ディズニーの『眠れる森の美女』に出てくるキイチゴのジャムを作るシーンが子供の頃から憧れだったんですが、人の手で栽培されていないので、ジャムを作れるほどキイチゴを採集できることなんてずっとなかったんです。 でも、とある場所で初めて大きな群生地を見つけて、ジャムが作れるほどのキイチゴを採集したときは大興奮でした。 人の手で管理されない野生の植物だからこそ、そうした偶然の出合いがある。そうして見つけ出した雑草の個性を知って、おいしく食べられる料理法を考える。この楽しさが雑草食の魅力なんです。 ●Michikusa1991年生まれ、千葉県出身。東京農業大学農学部農学科卒。幼い頃より道端、河原、街中の商店街などで足元の植物を観察。現在は岡山県を中心に、雑草を暮らしに取り入れる方法を模索しながら各地で観察会やワークショップを開催。毎回ひとつの雑草を取り上げて、具体的な調理方法や活用術について実体験を交えて話す『道草を食む~雑草を暮らしに活かすRadio~』(Apple Podcast自然カテゴリ第1位)を不定期に配信中。薬草料理マイスター。自然観察指導員 ■『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室CCCメディアハウス 1870円(税込)身近な雑草を食べることをテーマに、雑草の調理法、採集の仕方、雑草にまつわるさまざまな情報がつづられたエッセイ&レシピ集。四季折々の雑草を、おしゃれなイラストや写真と共に紹介している。雑草料理はどれも再現したくなる出来栄えで、毎日の通勤路でもつい雑草に目が行ってしまうこと請け合い。休日の散歩のお供に持っていき、雑草採集したくなる。眠ってしまった好奇心を呼び覚まし、野趣あふれる未知の味覚の世界に誘う一冊だ 取材・文/室越龍之介