<紡ぐ思い・センバツ2021北海>選手紹介/中 大津綾也捕手 あの一敗、胸に刻み /北海道
「野球をやめようと思った」という忘れられない試合がある。昨夏の甲子園に代わる道独自大会。チームは南北海道大会の準々決勝に進み、札幌大谷と対戦した。タイブレークにもつれ込んだ延長十回裏。6―6の同点から1死満塁のピンチを迎え、自らの捕逸で勝利を逃してしまった。 退部を思いとどまらせたのは先輩たちの「やめるな」という温かい言葉。下宿の自室にチームが敗れた時の新聞記事を張って自分を鼓舞していた時期もある。今はスマートフォンに捕逸の場面の動画を保存し、「気持ちが浮ついた時、勘違いしないよう見直している」と、大きな一敗を胸に刻む。 入学時の遊撃手から2年生の夏、正式に捕手に転向。捕手として2008年夏の甲子園に出場した立島達直・野球部長は運動能力の高さと肩の強さを評価するが、最初はエース左腕・木村大成投手のスライダーを捕れず、「プロテクター以外の所にばかり当ててアザだらけ。突き指した所をもう一度、突き指していた」と振り返る。反復練習で補い、正捕手の座をつかんだ。 せたな町出身。地元で小学1年から野球を始め、北檜山中野球部でも活躍。監督を務めた水口力教諭(44)=現函館青柳中=は「どこでも守れるオールラウンドプレーヤー。中学では個人が頑張ることでチームのレベルアップと、他の子の頑張りにつながると教えてきた」と話す。 昨秋の大会でも尊敬する水口先生の教えを守り、攻守の要として役割を果たした。2番打者として打率5割4分5厘。犠打、四死球ともにチームトップの9個を記録し、「与えられた役目をこなしたかった。バントも最初はうまくなかったけど、必死に練習しないとレギュラーにはなれないので」と頑張ることは忘れない。 北檜山中の先輩には、16年夏の甲子園で北海が準優勝した時のメンバー、三浦琢斗さんがいる。「野球を始めた時からキャッチボールをしてくれた」という憧れの先輩。帰省した際、準優勝の銀メダルを首に掛けてもらったことがある。「自分も甲子園で野球がしたいと思った大きな出来事だった」。支えてくれた先輩たちの思いも大舞台での大きな糧にする。【三沢邦彦】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇北海の甲子園開幕試合 年 結果 対戦校 1920夏 ●4-7 長岡中 24夏 ○5-4 静岡中 25夏 ●3-9 東山中 32夏 ●0-4 明石中 38夏 ●1-3 高崎商 40夏 ●2-3 松江商 53春 ●0-3 伏見 60春 ○4-1 那覇 2015夏 ●4-18 鹿児島実 ※今回で10回目で通算2勝7敗。24年夏は延長十二回、40年夏も延長十四回の接戦だった ……………………………………………………………………………………………………… ◇北海の兵庫勢対戦成績 年 結果 対戦校 1932夏 ● 0-4 明石中 38春 ● 3-8 明石中 54春 ○ 4-1 滝川 60春 ○ 5-2 育英 70夏 ●10-13 滝川 84夏 ● 3-5 明石 92夏 ● 2-3 神港学園 95春 ● 3-4 報徳学園 2017夏 ● 4-5 神戸国際大付 ※通算2勝7敗。17年夏の神戸国際大付戦は七回に逆転3ランを許し、涙をのんだ