唐田えりか「この仕事を続けていいのか…」悩んだ時期に出会った長与千種役 役づくりで丸刈り&10キロ増量
「この仕事を続けていいのか」悩んだ時期に出会えた作品
特に大変だったのは体重を増やすこと。唐田は「とにかくひたすら食べまくりました」と振り返ると「ずっと動かずにいれば、もう少しスムーズだったと思うのですが、週に3回体づくりのトレーニング、週2でプロレス練習というスケジュールだったので、いくら食べても運動でカロリーが消費されてしまうんです」と苦笑い。 プロレスラーの体形にしていきながらの増量は予想以上に難しく、「もう食べることが面倒くさいと思う時期もありました」。最終的には10キロ程度の増量に成功したが、その際も栄養士やトレーナーによる食事の管理、月に1回の血液検査などのサポートを受け、“戦える体”を作り上げた。
劇中では激しい試合が繰り広げられる。特に、ゆりやんレトリィバァ演じるダンプ松本と長与の「敗者髪切りデスマッチ」は1985年8月に実際に行われた伝説的な試合で、本作の見せ場の一つ。ダンプに丸刈りにされる際にはカツラを使う選択肢も与えられるなか、唐田は髪を切ることを選んだ。
その理由について唐田は「この仕事を続けていいのかな……と思っていた時期にオーディションの話をいただきました。自己満足なんじゃないか、誰が自分を見たいと思ってくれるんだろう」とネガティブな気持ちが渦巻く一方で、「事務所の社長やスタッフの皆さんが親身になって自分に向き合ってくださって……。あのとき本当に一人ぼっちだったら、きっと動き出せなかった。力になってくださった方々のためにも、とにかく覚悟を持ってやり遂げたいと思ったんです」と胸の内を明かす。
ようやくスタート地点に立てた感覚
長与の生きざまには共感できる部分も多かったといい、「この現場が終わっても、ずっと心に残っていることがあり、いつでもパッとあの撮影の瞬間に戻れるんです。すごく貴重な経験になりましたし、より多くの人への感謝を感じました。支えていただいたからこそ、この作品につなげることができましたし、またここから頑張らなければ……という気持ちにもなりました。やっとスタート地点に立てたのかなと思います」としみじみ語る。 10代から俳優として映画やドラマに出演していたが、常に芝居に対して「苦手意識があった」と語っていた唐田。役に対してどんな思いを抱いているのかをうまく言葉にすることができず、悩む日々も多かった。しかし、作品を重ねるたびに「お芝居を通して思いを伝えられるという感覚」が増してきたという。
特に本作では長与千種という稀代のスターを演じたことで、唐田のなかにある思いも伝えることができた。「自分にとってお芝居はすごく必要なもので、やっと生きることができる場所というか大事なものだと思えるようになってきました。胸を張ってそう言えるようになってきたことはとても嬉しいです」と目を輝かせていた。(取材・文・撮影:磯部正和)