浦和のV奪回戦略
昨年、あと一歩のところで8年ぶりのJリーグ優勝を逃した浦和レッズが、今オフに積極的な補強を敢行した。期限付き移籍からの復帰組3人を含めて、新たに加わったのは大宮から獲得したFWズラタン、広島から獲得したFW石原直樹ら、実に11人だ。 浦和はどのようなコンセプトで選手補強を行ったのか。2015年をどのように戦おうとしているのか。 「新戦力11人」と聞いたとき、まずはその人数の多さに驚くのではないか。内訳を見ると新人は浦和ユースから昇格した2人のみで、完全移籍で獲得した即戦力が6人いる。J2からJ1へ昇格したクラブ、あるいはその逆などであれば違和感はないかもしれないが、浦和の場合は優勝を逃したといえ昨季は2位。文字通り「あと一歩」のために11人もの新戦力を迎えたことから伝わるのは、タイトル奪取へ向かう、強く明確な意気込みだ。 補強のコンセプトもハッキリしている。「ペトロヴィッチ路線の継続と増強」だ。 12年に広島から浦和に来て指揮を執り、今年で4年目を迎えるミハイロ・ペトロヴィッチ監督が編み出し、今やJリーグの複数チームが取り組むまでになっている3-4-2-1システム。人とボールが流麗に動く、この独特のポゼッションスタイルは、なじむのにある程度の時間を要するうえに、選手の個性によっては向き不向きという部分が出やすい性質の戦術と言える。 それだけに「向いている」選手が加われば11人のハーモニーが劇的に高まるのがこのスタイルの特徴だ。 13年に鹿島から加入したFW興梠慎三は、1トップにボールが収まることでチャンスメークが飛躍的に向上することを示した。14年に広島からやってきたGK西川周作は、チーム全体の守備意識のマネジメント力アップに大きく寄与し、守備陣の顔ぶれはほぼ前年のままでありながらチーム全体の失点数をおよそ半減させることに貢献した。シビアな目を持つことでも知られる浦和サポーターも、この2人にはすぐさま拍手を送っていた。 では、今年の新戦力たちが期待されていることは何か。 完全移籍の6人を見てみると、攻撃陣の補強が目を引く。浦和は昨夏、生え抜きFWの原口元気がブンデスリーガのヘルタ・ベルリンに移籍。このときは、それまで主にボランチでプレーしていた柏木陽介が2列目に上がることで原口の穴を埋めることに成功した。 ところが、シーズン残り5試合となった10月26日の第30節鹿島戦で骨折した興梠の離脱は大きな痛手だった。最後までこの穴を埋めることができず、残り4試合の得点はわずか3。秋口までは堅守を誇っていた守備陣も攻撃力低下という状況下で最後には息切れを起こしてしまい、試合終盤の失点を繰り返し、ガンバ大阪に覇権を奪われてしまうことになった。