奈良の山奥、過疎の村「空き家に明かりを」 移住の女性2人組、所有者の思い生かす
過疎化が進む奈良県南部の上北山村で、移住者の女性2人組が空き家対策に奮闘している。完全に空き家化する前に所有者と関係を築き、意思を確認しながら活用を考える活動が特徴だ。「朽ちていくのを待つだけではもったいない。明かりがともる場所として存続してほしい」と願う。(共同通信=大森瑚子) 面積の約97%を森林が占める上北山村の人口は6月時点で434人。村によると、空き家数は約150軒に上り、対策が課題となっている。 岐阜県多治見市出身の久米恭子さん(47)と大阪市出身の小谷雅美さん(48)はどちらも8年ほど前に越してきた移住者だ。互いに空き家問題に関心を持っていることが分かり「楽しみながら、取り組んでみよう」と合意。2022年、空き家の活用策を考えるユニット「mossumo(モスモ)」を立ち上げた。 「空き家のことを考えてみませんか」「家のこと手伝います」―。村内でチラシを配り、活動をスタート。次第に口コミで広まり、依頼が入るように。空き家の所有者に代わり通風をしたり、独居の高齢者宅の掃除や、庭仕事を手伝ったりするなど内容はさまざまだ。
活動の中で大切にしているのは依頼主の「家に対する思い」を聞くこと。「自分がいなくなっても誰かに住んでほしい」「使われなくなるのが一番嫌だ」。関係を築く中でこうした思いを打ち明けてくれるという。2人はその意思を覚えておき、家族に伝える。 久米さんは「空き家問題で多い落とし穴は、所有者の意思を家族が知らないこと」と話す。所有者が亡くなった後に「生前、大切にしていたから知らない人に譲るのは嫌なはずだ」と家族が忖度し、活用に消極的な例もあるという。 2人は現在、自分たちでも空き家を借り「とても住める状態ではなかった」という一軒家に再び命を吹き込んでいる。地名をとって「木和田テラス」と名付けた。定期的にイベントを開催し、村民らの交流の場にもなっている。「空き家の可能性に気が付く、きっかけとなる存在でありたい」 ◎空き家対策 空き家対策 総務省が2023年に実施した調査によると、空き家数は全国で約900万戸に上り過去最多。災害時の倒壊や不法侵入、景観の悪化といった問題が指摘され、対策が急がれている。空き家対策特別措置法では空き家への課税を強化し、利活用や撤去を促進。希望者が物件情報を検索できる「空き家バンク」も全国に広がっている。