毒蛇駆除で持ち込まれ在来希少種を襲い始めたマングース 自然遺産奄美の外来種問題を20年かけ解決に導いたバスターズの世界的快挙
芸術や産業経済など各分野で郷土の発展に貢献した個人・団体を顕彰する第75回南日本文化賞(南日本新聞社主催)は1個人、2団体に決まった。 【写真】「奄美を外来種対策のモデルにしたい」と語る後藤義仁さん。隣は探索犬のピピ=奄美市名瀬の自然環境研究センター奄美大島事務所
社会部門の奄美マングースバスターズ=代表者・松田維(たもつ)氏=は環境省の委託で2005年結成。毒蛇ハブ駆除のため奄美大島に持ち込まれながら、島固有の希少種を襲っていたマングースの捕獲を進め、環境省が今年9月に根絶を宣言した。活動は世界自然遺産登録の際にも高く評価された。 学術教育部門の堤剛氏は日本を代表するチェロ奏者で、2001年から霧島国際音楽祭の音楽監督。45回の節目だった今夏は東京公演を成功させるなど、歴史ある音楽祭として国内外に定着させた。 学術教育部門の川内大綱引保存会(会長・橋口知章氏)は薩摩川内市で400年以上続く伝統行事「川内大綱引」を存続させる目的で1985年に設立。子供大綱引を催して後継者育成に尽力し、健全な行事開催にも努め、今春、国の重要無形民俗文化財に指定された。 贈賞式は11月1日、鹿児島市の城山ホテル鹿児島である。 ◇ 奄美大島の外来種問題は9月3日、「特定外来生物フイリマングースの根絶宣言」という大きな転換点を迎えた。奄美の自然を守りたい-。捕獲専門チーム「奄美マングースバスターズ」はその一心で突き進み、20年近くかけて世界的な快挙を成し遂げた。
1979年、毒蛇のハブ退治を目的に沖縄からマングース約30匹が持ち込まれた。しかし、昼間に活動するマングースが夜行性のハブと出合うことはまれで、代わりにアマミノクロウサギなど在来希少動物が襲われた。環境省は捕獲に本腰を入れ、2005年にバスターズを立ち上げた。 根絶への道のりは平たんではなかった。マングースは強い繁殖力で全島に生息域を広げ、推定1万匹に増加。当時、日本の外来種対策は遅れており、「根絶は不可能」とみる有識者も少なくなかった。 バスターズは広い島内で効率よく捕獲しようと、在来種を混獲する恐れがあったわなを改良したほか、国内で初めて探索犬を導入。薬剤入りの餌も使った。 防除面積は約700平方キロメートルに及び、根絶例としては世界最大規模。メンバーをまとめる松田維さん(55)は「奄美の森を守ろうと全員が力を発揮した。仲間に恵まれた」と振り返る。 近年、在来種の生息状況は改善し、21年の世界自然遺産登録にもつながった。探索犬ハンドラーの後藤義仁さん(49)は「外来種問題を繰り返してはならない。奄美が対策のモデルになるといい」と力を込める。
10月からはマングースの再侵入監視と並行し、新たな試みが始まった。徳之島で繁殖する特定外来生物シロアゴガエルの駆除に、探索犬を応用できないか模索する。成功すれば繁殖期でなくても駆除でき、港湾での水際対策にも役立つと期待される。 ◇ 奄美マングースバスターズ 環境省の外郭団体の一般財団法人「自然環境研究センター」(東京)が2005年、嘱託職員12人を採用し発足した。最大48人で活動し、歴代メンバーは延べ123人。今年10月からは8人でマングースの再侵入監視などに当たる。
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