アルミにカーボンまで使われ始めている! トラックの軽量化には「乗用車」とは違う狙いがあった
さまざまな部分で軽量化が進められている
スポーツカーのようにグラム単位では軽量化されることはないが、軸重の制限があるためトラックは想像以上に軽量化されている。つまりトラックの場合、車体を軽量化できれば、その分荷物を積むことができるのだ。 【写真】軽量化ができる「スーパーシングルタイヤ」とは ただし、乗用車よりもハードな使われ方をするので、足まわりやシャシーは十二分に強度を確保しなければ安全性を保証できない。キャビン部分も衝突安全性のためには強度や衝撃吸収性などが要求される。 最近の乗用車は高張力鋼などを使って軽量化しているが、これは剛性(変形しにくさ)は高まるが、最終的な強度(壊れにくさ)はあまり変わらないのでトラックに使うには限度がある。 もっとも手っ取り早い軽量化は乗用車と同じアルミホイールの装着だ。純正のスチールホイールは、強度は高くても、剛性を確保するため重量が重くなってしまう。 それに対してアルミ合金は比強度(重量に対する強度の比率)が高く、剛性も高いため、ホイールに使用すると軽量に仕上げることができる。とくにトラック用のアルミホイールは鍛造製が主流で強靭さを誇る。 さらに大型トラックの場合、後輪のダブルタイヤを1本の太いタイヤ、通称スーパーシングルにすることで、大幅な軽量化を実現できる。車体を支えているのはタイヤのゴムではなく内部の空気なので、タイヤの強度を確保してシングル化すれば、1軸あたり100kgもの軽量化を実現できるのだ。スーパーシングルと呼ばれるタイヤは、通常のトラック用タイヤを2本並べた幅があり、サイドウォールは1本分で済むため、1軸あたり100kgも軽量化できるということになる。
荷台部分には高性能な素材を採用
このほかトラックで軽量化が有効なのは荷台部分となる。荷台部分はコストを考えると鋼板を使うのが一番いいが、それでは重くなったり荷物や地域によっては腐食による寿命の短さもある。 そのため一般的にはアルミ合金パネルを利用して軽量化と美観、耐久性を高めている。デッキに木材を利用しているのは軽量化だけでなく、衝撃吸収性の高さによって走行中の衝撃を緩和して積み荷のダメージを抑えるにも有効だ。木材は圧縮荷重にはとても強く、柔軟性にも富んでいるから荷台のデッキ材として非常に優れているのだ。 しかし耐久性ではアルミ合金の方が優れていることから、アルミ合金のデッキも多く、目的によって使い分けられている。 パネルバンやウイングボディの荷台パネルは軽量化をしやすい部分だ。ただし冷凍車などは断熱性も求められるから、軽くて断熱性の高い断熱材を開発して採用するケースも進んでいる。 他方、外板パネルはアルミからさらに軽いCFRP(炭素繊維強化プラスチック=カーボンファイバー)が採用され始めている。これはレーシングカーや航空機などに使われる強靭で軽量な素材であり、ついにトラックにも使われ始めているのだ。 一見ただの白いパネルに見える写真は、ウイングボディのトラックのパネル部分に採用されたCFRP。表面にダイヤ状の凹凸が見えるのは、カーボンファイバーのクロスが使われているからだ。
トラック魂編集部