筋肉が骨になる難病『FOP』と闘う山本育海さん、関西の高校生らと募金活動10年 兵庫・明石市
筋肉組織の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」と闘う兵庫県明石市在住の山本育海さん(26)と、関西の高校生たちが、治療法や新薬開発の研究のための募金を呼びかけ、10年目を迎えた。 母と二人三脚で…難病・FOPと向き合う山本育海さん、京大iPS細胞研究所へ 育海さんは小学3年だった8歳の時にFOPと診断された。FOPと闘う患者は、育海さんをはじめ日本に約80人、全世界で700~1000人いるという。 最初は病名もわからず、育海さんは母親・智子さんとともに治療法を見つけるために病院を渡り歩き、FOPの難病指定化に向けて奔走した。 iPS細胞を活用した治療法に活路を見出した育海さんは小学6年だった2010年2月、京都大学iPS細胞研究所(CiRA 京都市左京区 名誉所長・山中伸弥教授 / 所長・高橋淳教授)に自身の細胞を提供した。 皮膚を切除することは、FOPが進行する危険性が高まる可能性もあり、生命にも関わるリスクを背負う。 一方、研究所では資金不足が深刻な問題だったことから、「iPS細胞研究基金」を設立、寄付を募っていた。 それを知った育海さんは、同年、同級生らと「193(いくみ)募金」を始め、資金不足に悩む研究所のために「iPS研究所応援基金」として全額を寄付するようになった。 今年(2024年)も、育海さんの誕生日を迎える12月14日を中心に、地元・兵庫県明石市をはじめ兵庫県、大阪府の高校や職業訓練校、計16校の生徒らが、登下校時やランチタイムなどに「193(いくみ)募金」への協力を一斉に呼び掛ける。 昨年(2023年)は、44万6229円が集まった。 さらに、高校生に負けじと大人たちが広く一般の方々に呼び掛けた「1930円(いくみおうえん=育海応援)募金」には、193万8235円の寄付があった。 この日、育海さんと対面した高校生らは、難病と向き合い、懸命に生きる育海さんの姿を目にして、「強さ」を感じたという。 これを受け育海さんは「決して僕が強いのではなく、高校生の皆さんや、支援してくださる人たちの熱い思いがあってこそ、頑張ることができる」と思いを語った。 そして、「高校生のみなさんが、先輩から後輩に引き継ぎながら、10年も応援してくださっていることに感謝している。研究所応援の輪が、関西のみならず、全国に広がってほしい」と期待する。 育海さんの母親・智子さんは「継続する大切さを感じる。育海だけではなく、難病と戦うすべての人たちと、iPS細胞研究所を応援するために高校生か自ら募金活動を続けることはすごく尊い。研究者の方々にも、その思いが伝わっている」と感謝の気持ちを口にした。 育海さんらは全国に向けて寄付を募っている。 ◇193(いくみ)募金」 神戸信用金庫・魚住駅前支店 普通0091286 口座名義「エフオーピーアカシ(FOP明石)」 ◇「193(いくみ)募金」に賛同し参加した高校(2024年) 兵庫~明石商業高、明石高、明石北高、明石城西高、明石南高、明石西高、明石清水高(以上明石市)須磨学園高、神戸常盤女子高、職業訓練校カレッジ・アンコラージュ、県立舞子高(神戸市)、県立芦屋高(芦屋市)、仁川学院高(西宮市)、県立尼崎小田高(尼崎市)、県立加古川東高(加古川市) 大阪~賢明学院高(堺市) 《進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressiva: FOP)》 幼少期から全身の骨格筋や筋膜、腱、靭帯などが徐々に硬くなって骨に変わり、このため手足の関節の動く範囲(可動域)が狭くなったり、背中が変形したりする疾患。特徴として、生まれつき足の親指が短く曲がっていることが多いという特徴がある。有病率は200万人に1人とされている。 これまでのところ、この疾患に対し有効性が証明された治療法はない。
ラジオ関西