違和感ナシの“リアルめ”BLが人気、過激描写がなくても多幸感を得られるワケ
男性同士の恋愛を題材にした作品をBL(ボーイズラブ)という。近年ドラマ化作品なども増え盛り上がっているジャンルの一つで、書店等でも大きくコーナー化されている。昨今は恋愛以外にも男同士のアツい友情を描いた「ブロマンス」も注目を集めている。LINEマンガでもBLマンガ『中原くんと宮田部長』が連載中。「BLアワード2024」次に来る部門11位を受賞するなど、同作が話題になっているワケとは? 作者のやぎり茂さんに話を聞いた。 【画像】BLのセオリーを覆す? 180cm以下、さらに調理部でエプロン姿の部長
■広がるBLジャンル、読み手にも描き手にも気軽な距離感に
主人公の中原は、学校見学で出会った調理部の部長・宮田に一目ぼれ。入学と同時に調理部に入部し宮田に近づくが、イケメンがゆえに片想い経験のない中原は、自分の恋心をうまく伝えられない。そうこうしているうちに、なぜか宮田の友人に気に入られ、宮田に恋するライバルも現れる…。すれ違う男子高校生の学園ラブストーリーが「甘酸っぱい」「青春ドストライク」と、BLファンから話題を集めている。 ――BL作品を描くのは「ほぼ初めて」という先生ですが、もともと先生は読まれるジャンルですか? 【やぎり茂さん】実はあまり読みません。ですが、好きな雰囲気や性格の男子が出てくると、それだけで読み続けてしまうので、自分で読む場合も、設定よりキャラクター重視で読みます。BLというよりブロマンス(男同士の友情など恋愛以外の関係)が好きなので、少年マンガや青年マンガなどの深い絆が描かれているような作品を読むと、グッときてすぐ泣きます。 ――昨今、マンガアプリの影響もあり、BLに対する意識や読み手の変化を感じますが、先生はどのようにお考えですか? 【やぎり茂さん】気軽に読める、というのが読み手にも描き手にもとても良いと思います。BLジャンルの中にも本当に様々な要素があるので、何気なく試しに読んでみて、「BLは特に好きじゃないけどハマった」ということもあるのだろうなと。今まで気づいていなかった自分の好きな要素が見つけられるのは良いことだと思います。 ――そんな先生が今回BL作品を描かれたきっかけは? 【やぎり茂さん】BLマンガを描きたいというよりも、好きなキャラクターの物語をたくさん描きたいなと思いました。なかでも、宮田のような見た目と性格(調理部の美人部長)の人物を描きたいというのがまず最初で、宮田を生かせる人物というのが中原(イケメン執着系)、という順番です。 ――BLというと、少し過激な描写も魅力の一つかと思いますが、本作はベースが「青春マンガ」であり、ビギナーにも読みやすくなっているように感じます。 【やぎり茂さん】確かにBL作品では過激な描写が多いですが、この物語は少し身近な、「自分の学校生活でもこんなコ達がいたら楽しそうだな」と思えるような日常の内容になっています。そういった点で読みやすくなっているのかと思います。 ――コア層に絞らず、幅広く受け入れられるようなストーリーやキャラクターづくりをしているように感じました。どんな読者に向けて描かれていますか? 【やぎり茂さん】ターゲット層となると、決めていないので難しいですが、BLを読まない方や初めて読んでいただく方にもできるだけ違和感がないよう、男の子同士でもそれぞれの恋心に共感してもらえるように描くことを心がけております。 ――作品でこだわっている部分はありますか? 【やぎり茂さん】それぞれのキャラクターの個性がわかるように、できる限り些細な会話のやりとりも描くようにしております。 ――BLジャンルの作品だから描ける、伝えられると思うことはありますか? 【やぎり茂さん】もともと恋愛対象を異性以上に“好きになってしまう部分”が相手にある、というような、キャラクターの魅力を描けるところかなと思います(もちろん前提として「男性が好き」という内容のものもありますが)。ただこのお話では、過激な描写や「男の子同士だから」という葛藤の部分が少ないので、そういった意味でのBL要素は薄いのかもしれません。