優勝した古性優作（中央）

　考える前に体が動いた。目標の寺崎浩―脇本雄が前受けから突っ張って主導権を握ったものの、最終ホームから仕掛けた郡司浩にまくられる苦しい展開。すかさず郡司にスイッチしたが、今度はバックで佐々木悠が襲いかかる。３コーナー、古性は内に詰まり、絶体絶命のピンチ。「負けパターンだと思った。外を踏むことしか考えていなかったが、体が勝手に反応して」と、郡司が外したわずかなスキを突いて、内から伸びてＶゴール。８月平塚「オールスター」に続く今年２度目、通算８度目のＧ１タイトルをもぎ取った。 　昨年は３度のＧ１制覇で最優秀選手に選出された。今年もここまですべてのＧ１で決勝に乗り、安定感は見せていたが、満足はしていなかった。６月岸和田「高松宮記念杯」で南関作戦に屈し３着。３連覇を逃したうえ、ゴール後落車で体にダメージを負った。「前半は結果が出ず、よくなかった。今回も準決勝まで疲労が抜け切れていない感じだった」が、持ち前の精神力と調整能力を発揮し、ファンの期待に応えてみせた。 　ただ、レースに関しては反省点も。「寺崎君が駆けたところで（車間が）空いた。外を迂回（うかい）して合流したが、そこで脚を使った。今日はラインとして機能しなかったし、勝っても複雑な気持ちもある。寺崎君、脇本さんが頑張ってくれたのに、迷惑をかけた」。勝てばいいだけの選手ではないという自覚があるからこそ、自らを戒める。 　古性が究極の目標として掲げる「ダブルグランドスラム（各タイトル複数回制覇）」。大会初Ｖだった昨年に続く連覇で、野望にまた一歩近付いた。「日本選手権と競輪祭は取っていないし、２つずつ取らないと。まだまだです」と、今後も手を緩めるつもりはない。今年の獲得賞金は２億３８００万円を超え、来月の「競輪祭」、さらに年末の「グランプリ」を勝てば史上初の４億円レーサー誕生の可能性も。常に「他人が過去にやったことには興味がない。誰もやったことのないことを成し遂げたい」と口にする古性。破格のスケールで突き進むこの男なら、やってくれるはずだ。 （村山　茂生） 　◆古性　優作（こしょう・ゆうさく）１９９１年２月２２日、大阪市生まれ。３３歳。清風高卒。日本競輪学校（現・日本競輪選手養成所）１００期生として、２０１１年７月にデビュー（岸和田〈１〉〈１〉《１》着）。２１年の平「オールスター」で初タイトルを獲得し、平塚「オールスター」に続いて今年２度目、通算８度目のＧ１、２１年静岡グランプリを含め特別９度目の優勝。通算１０８４戦３４２勝。通算獲得賞金は１１億３６２４万３５９６円。１６８センチ、７７キロ、太もも６２センチ。血液型Ｏ。