直列6気筒エンジンの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
やばいポイント1「官能的なサウンド」
直6エンジンの魅力は何よりクルマを運転して見るとはっきりわかるのだが、まず感じる魅力はエンジンサウンドだ。 直6エンジンはエンジンを始動させた段階から何か他のエンジンとは違うサウンドを感じるのだが、それはアクセルを踏み込んでいくと如実に表れてくる。加速時には 「シュルルルル」 「ヒュルルルル」 のような雑音のない官能的なサウンドがはっきり聞こえてくるのだが、これは直3、直4エンジンやV6エンジンではまず耳にすることのない澄んだサウンドだ。直6エンジン搭載車を運転するとこのサウンドに包まれてるので実に気持ちいいドライブが楽しめ、スピードを出さなくても心はずっとウキウキなままである。 直6エンジンが他のエンジンにはないサウンドを響かせる理由はその形式自体にあり、直列6気筒というシリンダー配置が生み出す「完全バランス」のおかげだ。 エンジンはピストンの上下運動によって主な振動が生まれており、それにともなってエンジンサウンドや騒音が生まれている。直3、直4、V6などのエンジンは振動の発生時 ・1次振動 ・2次振動 ・偶力 といった振動成分が構造上バランスを欠いており、それがエンジン音に「ブルルルル」という振動音を生み出してしまっている。しかし直6エンジンは構造的に上記の振動成分が互いにうまく打ち消し合うことでバランスしており、澄んだ官能的なサウンドとなっている。 直6エンジン以外のエンジンは不安定な振動成分を打ち消すために別の機能を追加したりするのだが、直6エンジンは余計な機能がなくてもバランスするのでシンプルなエンジンに仕上がるメリットも持っている。
やばいポイント2「リニアな吹け上がり」
直6エンジンの完全バランスな特徴は吹け上がりにもつながっており、シルキーでなめらかな加速もまた魅力につながっている。 直6エンジンのクルマに乗ってアクセルを踏み込んだときにはその官能的なサウンドに心が寄るが、落ち着いてクルマの挙動に目を向けてみると余計なもたつきのない吹け上がりを感じられる。 直4エンジン車やV6エンジン車に乗っていても普段はさほど気にならないのだが、直6エンジン車に乗ってみると他のエンジン形式では発進時や加速時にわずかなラグがあることに気づくだろう。サウンドと同じメカニズムで振動成分がバランスしないと吹け上がりにも影響があり、直6エンジンの完全バランス構造が生み出す気持ちのよい加速はとても魅力的なものになっている。 直6エンジンはこのなめらかな吹け上がりから海外では 「シルキーシックス」 と呼ばれることもあり、絹のすべすべとした手触りのよさになぞらえたものだ。しかし実際に運転してみると実にうまく表現したものだと実感でき、それを感じた頃には直6エンジンのとりことなっているだろう。 筆者も一度直6エンジンのクルマから最新のV6エンジンのクルマに乗り換えを考えたことがあり試乗などしたのだが、なめらかな吹け上がりと心を湧き上がらせるサウンドが感じられないことで瞬時に断念したことがある。 これほどまでに心をとりこにするエンジンはやはり直6エンジン以外にはなく、事情が許す限り乗り続けたいものだ。