ガザ北部の集合住宅空爆、屋上の「監視役」が標的だったとイスラエル当局者
パレスチナ・ガザ地区北部の町ベイトラヒアにある5階建ての集合住宅をイスラエル軍が29日に攻撃し、多数の死者を出したことについて、同軍の関係者は30日、イスラエル部隊を双眼鏡越しに見る「監視役」が屋上にいるのを確認して対応したものだったと、BBCに語った。 ベイトラヒアの集合住宅は空爆で倒壊し、子供25人を含む90人以上のパレスチナ人が死亡または行方不明になっていると、イスラム組織ハマスが運営するガザ保健省は発表している。 BBCの取材に応じたイスラエル軍関係者は、29日の攻撃は計画されたものではなかったとし、イスラエル部隊はあの建物が避難民用のシェルターとして使用されていることを知らなかったと述べた。 また、報じられている死傷者数とイスラエル軍が確認した死傷者数には食い違いがあるとした。 29日の空爆は、イスラエルの最も親密な支援国であるアメリカの強い反発を招いた。アメリカは「恐ろしい出来事で、恐ろしい結果をもたらした」とし、説明を求めた。 米国務省のマシュー・ミラー報道官は30日、イスラエルは「我々が要求した回答を我々に伝えるために十分な対応をしていない」と述べた。 「彼ら(イスラエル)は公の場で発言したこと、つまり、この問題について調査中であるということを我々に伝えてきた」と、ミラー氏は付け加えた。 ■現地の状況は イスラエルはBBCを含む国際メディアがガザ内で独自に報道することを認めていない。そのため、現地での事実確認は困難になっており、動画や目撃証言から得られる情報に頼らざるを得ない状況となっている。 空爆から数時間後にソーシャルメディアに投稿された複数動画には、空爆現場で毛布に包まれた複数の遺体や、遺体の一部を集める人々の姿が映っていた。 ガザ市民のウム・マリク・アブ・ナスルさんは、29日放送のBBCアラビア語の番組「ガザ・トゥデイ」に対し、空爆で自宅が破壊され、自分はがれきの中から助け出されたのだと語った。 「午前0時30分か1時ごろ、隣のアウダ家が爆撃を受けた」とこの女性は述べた。「私たちは彼らを助けるために駆けつけた。でも、彼らの娘は私たちの家で亡くなった」。 「午前4時に、私たちがいた数階建ての自宅が倒壊した。(イスラエル軍は)約300人の避難民が暮らしていた建物を攻撃した。みんな私たちの家に身を寄せていた。彼らはただの民間人で、レジスタンス(パレスチナの武装組織)とは何の関係もなかった」 「夫やほかの若い男性はがれきの下敷きになったままで、助け出されていない」とこの女性は付け加えた。「夫のいとことその子供5人も、まだがれきの下にいる」。 近くのカマル・アドワン病院は、先週にイスラエル軍の急襲を受けたため、医師2人と限られた看護スタッフしか残っていない。同病院は29日、録音メッセージの中で、空爆で死亡した25人以上の遺体が病院に運び込まれ、がれきの下に77人が取り残されているとした。 同病院のフッサム・アブ・サフィア院長は、子供や女性を含む約45人の負傷者が荷馬車や、人の手によって運ばれてきたと付け加えた。 国連のトル・ウェネスランド特別調整官(中東和平担当)は、「ガザ北部で人道法違反に関する深刻な懸念を生んでいる大規模な避難行動と並行して起きている、一連の集団死傷事件における新たな攻撃」だと述べた。 イスラエル軍が10月6日にベイトラヒアや隣接するジャバリア、ベイトハヌーンで地上作戦を開始して以降、数百人が死亡していると報じられている。イスラエルはハマス戦闘員の再編に対抗するための攻撃だとしている。 これまでに7万人以上のガザ市民が、ガザ市へと避難している。国連の推計では、食料や水、医療品の深刻な不足により、約10万人が悲惨な状況に置かれている。 イスラエル軍の攻撃により、医療施設や消防、捜索救助、井戸、パン屋など、不可欠なサービスも閉鎖を余儀なくされている。 ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエルは直後にハマス壊滅作戦を開始した。 ハマス運営のガザ保健省によると、それ以来、ガザ地区では4万3160人以上が殺害されている。 (英語記事 Deadly Israeli strike targeted 'spotter' on Beit Lahia building's roof, official says)
(c) BBC News