劇団『ヨーロッパ企画』が2分間のタイムループ映画を制作 脚本家・上田誠が“時間もの”にこだわるワケ
■3人が選ぶ共通のお気に入りシーンは“車の周”
――映画でのお気に入りのシーン、見どころはどこですか? 藤谷:雪の中で逃避行してるシーンの中で、おかみさんと番頭さんをかわして車に乗るみたいなシーンがあって。そこのおかみさんと番頭さんがザルというか。うんうんってミコトの話を聞いていて、この2人、ひいては(旅館の)ふじやさんの中にいる人たちの人柄を表してる感じがして。ミコトにうそをつかれて、雪の中に“うわー”とか倒れる、かわいらしさも含めていとしいなと思って、すごくそこが好きです。 諏訪:(僕も)まさに同じところで、貴船を脱出するんだって車に乗る、その乗った後の“ワイパーの雪のどけ方”が、見たことないというか。あそこのリアルさがすごかったというか。長回し2分をやっているからこそのリアル感が出たんだなと思って。雪が降って貴船の街がすごくかわいらしくなるんですよ、急に。こんな風景にもなるんだと思って、車に乗ったら“ガッサー”っていうのがすごく面白くて。これって一発じゃないと出来ないよなとか。そこがうそついてないのがすごく良かったですね。 上田:今の2人のお話を絡めてなんですけど、この映画の始まりが、貴船神社のてっぺんから始まって、序盤でいろんな人々の風景を描写していきながら、ミコトの中で一番気持ちが沈んだところと、それが川沿いに行くというような高低差とリンクするような進行なんですね。 最終的に物語としては高揚感のある方に戻っていくんですけど、その中で、貴船を下りようとするところが本当に真逆の方向というか。この時間をみんなでもう一度元に戻そうっていう方向とは真逆の逃走劇みたいなシーンで。これが山を登っていく感じだったら全然違うイメージだと思うんですけど、どこまで下れるか自分たちみたいな。あの感覚は僕はすごく好きな場面ですね。なので、3人共通する、何十周あるループの中で“車の周”があるんですけど、そこは見どころですね。