「岸田文雄を応援してやろうという熱量が今、どれくらいあるのか」…衆院広島1区、3町追加で緊張感
27日投開票の衆院選から、選挙区割りの変更で旧広島4区から広島1区になった広島県府中町。車通りの多い道路沿いにある警備会社「Figona」の壁には昨秋から、1区選出の前首相・岸田文雄氏(67)がりりしい表情で写るポスターが貼られている。岸田氏の秘書から「貼らせてほしい」と依頼された。 【地図】広島1区
1区には府中町のほかに、海田、坂の両町が加わった。3町は元々、前回選(2021年)で当選した自民党・新谷正義氏の地盤。同社社長(47)は「新谷さんは会ったことがあるけれど、岸田さんは『テレビの中の人』。近所でも1区になったことにピンときていない人が多い」と話す。
広島市の中区、南区、東区で構成される旧広島1区は「岸田家」の地盤中の地盤で、祖父・正記氏、父・文武氏と3代にわたり受け継がれてきた。岸田氏も中選挙区時代の1993年から連続で10回当選してきた。
新たに加わった3町の有権者は計約7万8000人。1区(約40万8000人)の2割を占める。地元秘書はポスターを貼ったり、祭りに顔を出したり、新たな地盤固めに奔走する。ある秘書は「夏休みは地域の盆踊りに20回以上参加した」と言う。「油断はならない。一生懸命汗をかかないと」と緊張感を高める。
背景には、新しい選挙区での苦い連敗がある。
5月26日の府中町長選。自民、公明両党が推薦した前町議の新人が大差で敗北した。岸田氏らのため書きで埋めつくされた候補者の事務所に集まった自民党や公明党の県議らには気まずい沈黙が漂った。岸田氏の代理として姿を現した長男で元首相秘書官の翔太郎氏は「結果を受け止め、負けた原因を分析する」と言葉少なだった。
「地域にもっとコミット(関与)しないといけない」。町長選後、岸田氏は地元秘書に電話でそう伝えた。昨年11月にも海田町長選で自民党が推薦した現職が敗れている。府中町長選と同じ日に投開票された静岡県知事選でも党推薦の候補が負けており、政治とカネの問題で全国的にも党への逆風が吹く。県連内にも「地方選では自民の名を全面的に出さないほうがいいのかもしれない」との悲観的な声が漏れる。