バフェットの8回目の円債発行は、円高にならない自信を深めている証拠! 資源そのものより資源会社を買おう。バフェットは円を売って日本の商社を買っている
●バフェットの8回目の円債発行は、円高にならない自信を深めている証拠! 資源そのものより資源会社を買ったほうがいい 元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。 【詳細画像または表】 前回の放送では、最近マーケットで注目されているカカオ豆の暴騰とそれを利用した投資機会の話、バイデンとトランプのどちらが大統領になった方が、株が上がるのかという話などが展開された。 今回の放送では、中東リスクが米大統領選に及ぼす影響や、ウォーレン・バフェットが米ドル/円が下がらないと自信を深めている理由、生産性を巡るゴールドとAIの話など、盛りだくさんの内容となったので、さっそくチェックしていこう。 ●ポールさんのカリブ海航海はアメリカ領バージン諸島で終わりを迎えた 番組冒頭、アシスタントの木村カレンさんが、ポールさんは今回、カリブ海のアメリカ領バージン諸島のヨット上から出演していることを紹介した。 すると、ポールさんは今、アメリカ領バージン諸島のセントトーマス島にいて、約600海里(約1100㎞)くらいのポールさんの航海がここで終わったことを教えてくれた。 これから、ポールさんのヨットを貨物船に積んで、ポールさんが住んでいるシアトルに輸送し、ポールさん自身は飛行機でシアトルに帰るそうだ。 ポールさんは1週間ごとに3回連続でカリブ海のヨット上から番組に出演したのだが、カリブ海航海も終わりを迎えるということで、木村カレンさんが「私たちも旅行へ行った気分で楽しみました」とコメントした。 ここで、番組MCの渡部一実さんが、カリブ海からポールさんが出演した3回とも空が晴れていたことに言及すると、ポールさん曰く、カリブ海は今、雨季ではなく乾季で晴れの日が多く、雨が降っても長続きしないとのことだった。 ●イスラエルは戦場で勝っているものの、戦略的に負けている。大統領選でイスラエルの問題はバイデンにとって不利に働く 続いては、中東リスクの話題に。 イスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃し、イランが報復する可能性があることから、金が買われたり、原油が上がったりしているけれど、中東リスク、中東の動きをポールさんはどう見ているのか、渡部さんが質問した。 中東リスクは結構存在していて、むしろ大きくなっているかもしれないとポールさん。 でも少し触れたとおり、イスラエルは戦場では勝っているものの、戦略的には負けているように見えるのだという。 イスラエルの攻撃で、女性や子供の死者が出ていることもあり、同盟国からの支持がどんどん下がって孤立している状態なのだそう。 それでもイスラエルは方針を変更しないため、反イスラエルの勢力がチャンスだと捉える可能性もあり、全体的に不安定になっているとのことだった。 渡部さんは続けて、バイデン政権もイスラエルのネタニヤフ首相にやり過ぎるなと言っているようだが、アメリカとしてもイスラエルに困っている状況なのかとポールさんに聞いた。 イスラエルのやり方は、特に民主党の支持者の中で、人道的、モラル的にやってはいけないと考えている人が多いとポールさん。 昔のアメリカに対する変化も出てきているようで、今の民主党の支持者の中には中東系の人もいるし、キリスト教徒だけでもないため、昔のようにイスラエルへの支持が一辺倒というわけでもないようだ。 バイデン大統領は昔の民主党の人で、わりとイスラエルを支持する半面、大統領選で再選もしたいため、今の民主党支持者の声を反映する必要もあり、イスラエルにいろいろ発言しているんだそう。 ただ、イスラエルには完全に無視されている状態で、そこにバイデンのパワーのなさが表れていることから、大統領選でイスラエルの問題はバイデンにとって不利に働くようだ。 そこを覆すため、これからバイデンがイスラエルに厳しい発言をしたり、発言以上の行動を取る可能性もあるとポールさんは見ている。 ●FRBは利下げしたいという姿勢に変わった。大変なインフレになることはなく、利下げは時間が少しずれるというだけの問題に 次に、FRBの利下げの話題に。 FOMCのドットチャートでは、今年3回の利下げになっている一方、地区連銀総裁が利下げは1回かもしれないとか、利下げはやるけど遅いかもしれないと言ったり、発言が拡散してきて読みづらくなってきていると渡部さん。FRBの利下げ方針はどうなっていくのか、ポールさんの見方を聞いた。 「結論から言うと、FRBは利下げしたいという姿勢に変わった」とポールさん。 以前のFRBは利上げしたい姿勢で、そのストーリーに合うようなデータの解釈をする傾向はあったけれど、今回の地区連銀総裁の発言などを見ると、少し利下げに寄りたい気持ちが感じられて、それに合うようなデータや裏付けを探っているようだ。 原油の上昇はインフレの高まりにつながる一方、失業率が3.9%で、もともとの予想より少し弱かったこと、コロナの時期の貯蓄が少し取り崩されたため、消費が落ち着くこと、中国が不景気なことなどがデフレの圧力になるそう。 いろんな要因が交差して、大変なインフレになることはないというのがFRBの姿勢で、利下げは時間が少しずれるだけの問題だとポールさんは見ている。 また、政治的に大統領選もあり、トランプもバイデンも利下げはある程度望んでいて、特にバイデンは景気を良くするため、利下げは歓迎ムードなのだという。 ●バフェットが8回目の円債発行。円高にならない信念を強めていることに他ならない すると、渡部さんが為替について疑問に感じていることを切り出した。 米10年債利回りは上がっているのに、米ドル/円はあまり上がらないし、下がりもしなくて微妙(※)だけれど、ポールさんはどう見ているのか気になるようだ。 (※放送日の4月9日時点で、米ドル/円は主に151円台で推移していたが、4月10日には153円台まで急伸した) 最近の米ドル/円は日米金利差で動いているけれど、アメリカでびっくりするような利下げはないし、日銀もびっくりような利上げはできなくて、それは市場に織り込まれているとポールさん。 例えば、日本の個人住宅ローンは9割が変動金利であること、今までずっと低金利だったのに、金利が上昇すると企業も耐えられないことなどから、日本の利上げは難しいようだ。 日本政府が望んでいるのは、賃上げによって良いインフレの循環に入ることで、それはある程度効いているそう。賃金の上昇はインフレにまだ追いついていないけれど、最近の報道や統計を見ると、賃上げは過去最高で、インフレに追いつくのは時間の問題だけとのことだった。 渡部さんの為替に関する質問はまだ続く。 「ウォーレン・バフェットのバークシャーが日本の商社を買ったりしていますが、社債を円建てで発行している。ということは、為替がそんなに円高に振れないと彼は読んでるってことですよね」 これに対してポールさんは、バフェットは公にそういう発言をしていないけれど、そういう考え方だと思うと答えた。 バフェットは円の債券を発行して、それで日本のグローバル企業、主に商社を買っている。日本の商社が持っている資産は円より米ドルや外貨の方が大きいため、円を売って他の通貨を買っていることになるそう。 もちろん商社という会社なので生産性の面もあるけれど、円で債券を発行するということは円を借りること、円を売ることであるため、バフェットは円高にならないと見ているという見方でいいようだ。 為替はある程度動くものの、過去の100円、110円、120円といった円高はあり得ないとバフェットは見ていて、8回目の円債発行ということは、円高にならないという信念を強めていることに他ならないようだ。 ●ゴールドは好きじゃないのは、生産性がないから! 資源そのものを買うより資源会社を買ったほうがいい。生産性最強のAIは足の長い投資となる 最後はゴールドとAIの話題に。 中東の問題もあるのか、ゴールドがものすごく上がっていて、リスクオフや戦争となるとゴールドと言われるけれど、ゴールドを買うことについてポールさんはどう考えているのか、渡部さんが聞いた。 ポールさんは「ゴールドはそこまで好きじゃない」とバッサリ。そう言うのには理由があって、ゴールドは何も生まず生産性がないからだという。 ゴールドには値段を裏付ける生産性がなく、人間の心理で値段が決まるため、短期的にはインフレヘッジになるかもしれないけれど、中長期になるとよくなさそうとのことだった。 ポールさんは生産性があるものの方が好きで、例えば株とか、生産性のある事業、不動産がいいようだ。 例えば、石油を買うとすると、石油そのものを買うより、生産性のある石油会社を買った方がいいという考え方だ。 また、生産性がないという意味では、通貨もゴールドや石油と同様で、国が裏付けているだけだとのこと。国がダメになったらその国の通貨もダメになるけれど、ビジネスを所有していれば、国がなくなっても、ビジネスが没収されなければ、富が生まれ続ける価値を持ち続けることができるとのことだった。 それは、円を借りて日本の商社などグローバル企業に投資しているバフェットがまさに体現していて、バフェットもゴールドが嫌いなのだそうだ。 ここで渡部さんが、ポールさんが言うところの生産性とAIの話を絡めて、「ジェームズ・ダイモン(JPモルガンCEO)がAIは蒸気機関以来の発明だと言っていて、生産性の面でもAIは最強ということでしょうか」と質問した。 ポールさんは「そうだと思う」と同意。AIで世界はかなり変わるため、足の長い投資だと見ていいようだ。アメリカのAI関連のテーマ物色はある程度進んで、高くなっているけれど、今は他のところでAI関連の銘柄を探している状態なのだそう。例えば、日本だと半導体関係のものとか、台湾のTSMCとか、そういうところも関連して上がっており、他にも探せるところはまだあるようだ。 また、最近の市場の特徴としてテクノロジーのほかに、資源がテーマになっているとのこと。インフレ対策や地政学問題として、資源の会社に投資すると恩恵を受けられるとのことだった。 番組終了間際、ヨットの上からカリブ海の景色をぐるっと1周見せてほしいと渡部さんに頼まれたポールさん。 綺麗な海やコテージ、ヨットが係留されている様子に、渡部さんも木村さんも「きれいだね~」と魅了されていた。 ここまで、4月9日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。 「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」
ポール・サイ
【関連記事】
- ■日本のインフレはしばらく続く。そこで起こるのは投資しない人から投資する人への富の再分配だ!日本人があまり投資しない5つの要因とは?
- ■世界経済はある程度弱肉強食で、今後もそれは加速!地道な投資により、富を増やせる可能性は高いーカリブ海の島々を巡るヨット旅で考えたことー世界経済はある程度弱肉強食で、今後もそれは加速!地道な投資により、富を増やせる可能性は高いーカリブ海の島々を巡るヨット旅で考えたこと
- ■日銀がマイナス金利を解除してもなぜ円高にならない?多くの専門家が年初に円高になると予想していた中、私が大幅な円高は起こらないと見ていた理由とは?
- ■バイデンよりトランプ大統領のほうが株が上がる!カカオ豆暴騰でチョコレート会社に投資のチャンスってどういうこと!?
- ■信越化学やパンパシHDには独自の強みがあり、日本株全体が上昇していなくても買っていい! トランプはバイデンよりインフレにアクセルを踏む経済政策を取る