時代を超えて夢見る人々を描く、ほろびて『センの夢見る』
ほろびてによる『センの夢見る』が2月2日(金)より東京芸術劇場シアターイーストにて上演される。今作は次世代の演劇を牽引する若い才能を選び抜く「芸劇eyes」の参加作品だ。 【全ての写真】ほろびて『センの夢見る』チラシ画像 2010年、劇作家・演出家・俳優の細川洋平の作品を上演する演劇カンパニーとして活動をはじめた、ほろびて。分断や差別、戦争、難民問題、ヤングケアラーといった「今、上演するのにふさわしい」現代の複雑な社会問題を題材にとり、同時代的な作品を発表してきた。2021年には『あるこくはく』で第11回せんがわ劇場演劇コンクールグランプリ、劇作家賞、俳優賞の三冠を受賞している。2023年に上演した拒絶と否定を巡る思索劇『あでな//いある』が話題になったことも記憶に新しい(『あでな//いある』は期間限定で無料配信もしている)。 今回、ほろびてが舞台に選んだのは、戦時下にあるオーストリアの村レヒニッツと、現代日本。1945年のレヒニッツで、空想の旅に出ることを貴重な娯楽として楽しむ三姉妹。2024年の日本で暮らす兄妹と、そのふたりに密着する自称YouTuber。時代も場所もかけ離れているはずのふたつの家庭のリビングルームが、ひとつの空間に重なる。ふたつの時代を生きる「夢見る人々」の生活が、どう変化していくのかを描く。 カンパニー名の「ほろびて」は、「一度なくなったものの中から、また立ち上げていく行為」を創作の源流にあると捉えて名付けたものだという。毎ステージ同じセリフを発すること、物語が時間を軸にして一方向に積み重なることで感情に訴えること。そういった、演劇においては当たり前とされることを疑い、常に表現について考えを巡らせ続ける彼らの新作がいったいどのようなものになるのか、目撃しておきたい。 文:釣木文恵 <公演情報> 芸劇eyes ほろびて『センの夢見る』 作・演出:細川洋平 出演: 浅井浩介、安藤真理、大石継太、生越千晴、佐藤真弓、藤代太一、油井文寧 2024年2月2日(金)~2月8日(木) 会場:東京芸術劇場 シアターイースト