変わった呼び名のゲームジャンル「メトロイドブレイニア」って? 閃きと知識を要求する名作群
海外のゲームメディア「NintendoLife」に寄港されたひとつの記事が、一部のゲームマニアのあいだで長らく話題になり続けている。 【画像】ひとつの閃きがクリアにつながる「メトロイドブレイニア」の傑作たち 当該の記事は「特定の傾向を持ついくつかのビデオゲームを、同じジャンル名をつけて一緒くたにすることに、果たして意味があるのか?」という投げかけから始まるものの、自分が最近楽しんでいるゲームに似た傾向があり、自分なりにそれに名前を付けているという。 記事の筆者であるKate Gray氏はそれらを「knowledge node puzzle(ナレッジノードパズル)」と呼んでいた。どういうものかというと「ゲームのある局面をクリアするために謎解きやパズルをこなすわけだが、そこに必要なものはゲーム側が用意した新しいアクションやアイテムではなく、プレイヤーの知識や閃きや観察力だけである」というゲームを指しているようだ。 Kate氏が挙げているのは『Outer Wilds』『Return of the Obra Dinn』『Fez』といった名作インディーゲームであり、たしかにどの作品も、アイテムを取ってくるだとか、アクションを覚えるといった物理的な制約はなく、考えひとつで突破できるゲームばかりである。 だが、Kate氏がこの話をパートナーに伝えてみると、パートナーは「それにはもう名称がある。metroidbrainiaだ」と答えたそうだ。 Kate氏はこの名前のセンスに絶望したようだが、すでに海外掲示板であるRedditではmetroidbrainia(メトロイドブレイニア)について議論が進んでいた。 このヘンテコな呼称に対する印象はさまざまだが、メトロイドブレイニアが指しているゲーム群についてはおおむね好意的であるようだ。 一応、メトロイドブレイニアという語の前提となるゲームジャンル「metroidvania(メトロイドヴァニア)」についても説明しておこう。任天堂の「メトロイド」シリーズとKONAMIの「悪魔城ドラキュラ」(海外タイトル:Castlevania)シリーズを組み合わせた語で、現代のインディーゲームシーンにおいて一大人気ジャンルとなっている。 何百もの小さな部屋(ノード)に分かれたアリの巣のようなマップを行き来し、特定のパワーアップやアイテムを集め、奥地にいるボスを倒すのが目的である。『Hollow Knight』や「オリ」シリーズが有名である。 ようはメトロイドブレイニアというのは、このメトロイドヴァニアからパワーアップを取り払い、その代わりにノード間を開通させるために知識や閃きが必要で、逆にゲームを熟知していれば瞬時にクリアすることも可能であるようなゲームのことを指しているわけだ。 さて、このあたりで筆者の私見も軽く述べておこう。 まず呼称についてはおおむねKate氏と同意見であり、わざわざ「メトロイドヴァニア」という語を経由しなければ伝わらないところに引っ掛かりは覚える。別に「ナレッジノードパズル」でも構わないと思うくらいだ。 しかしそれでもメトロイドヴァニアという点にこだわるのであれば、小部屋やエリアを行ったり来たりするパートは必要だろう。たとえば『Her Story』は面白い試みの知識ベースのゲームではあるが、疑似的なPC画面を眺めているだけの作品にメトロイドの名を冠するのは無理がある。 だが、知識や閃きだけでシーケンスブレイク(次のエリアや段階に向かうこと)が叶うタイトルは間違いなく美しいし、ゲームプレイの喜びに満ちている。もはやハードコアゲーマーは大抵のメトロイドヴァニアで2段ジャンプを取得することに辟易としているだろう。 お仕着せのパワーアップアイテムの代わりに、ユーザーにそれとなく閃きをもたらす導線が敷かれているゲームなら大歓迎だ。そんなゲームにひとまず付けられた名前として、しばらくのあいだは機能するかもしれないし、定着する前に廃れるかもしれない。その動向を、今後も折に触れて見ていこうと思う。
各務都心