きちんと薬を飲んでも血圧が下がらない…どうすればいい?
日本では高血圧症の患者は約4300万人と推計されている。日本高血圧学会は、治療のために降圧薬を服用している人は約2400万人と発表しているが、「ちゃんと薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」という人も少なくない。なにか手だてはあるのか。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。 高血圧治療専門の医師が教える「本当に血圧が下がる食べ物」 日本高血圧学会では「収縮期血圧140㎜Hg以上/拡張期血圧90㎜Hg以上」を高血圧症と定めていて、脳卒中や心筋梗塞といった脳・心臓血管病の最大の危険因子であることから、治療が行われる。 「一般的には、減塩などの食事療法や運動療法を実施しても血圧が下がらなければ降圧薬による治療となります。降圧薬にはいくつも種類があり、高血圧治療ガイドライン(2019)では、①カルシウム拮抗薬、②ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、③ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、④利尿薬の4種類が第1選択薬とされています」 ①カルシウム拮抗薬は、血管壁の筋肉を弛緩させて血管を広げ、末梢血管の抵抗を減らすことで血圧を下げる。②ARBと③ACE阻害薬は、アンジオテンシンⅡという血管収縮作用のある物質の働きを抑えることによって血管を広げ、血圧を下げる。④利尿薬は、尿の量を増やして塩分や水分を体外に排出し、血圧を下げる。 ■効く薬の種類を把握する 降圧薬による治療では、患者の状態やタイプに合わせてこれらから1種類または2種類以上を組み合わせて処方される。レニン・アンジオテンシンという血管を収縮させる物質が増えて血圧が高くなっているタイプではARBやACE阻害薬が効果的で、腎臓の働きが低下して塩分を体外に排出する力が減り水分が引きこまれて血液量が増えて血圧が高くなっているタイプには、腎機能を改善するカルシウム拮抗薬が効く。また、肥満などで循環血液量が増えていたり塩分感受性が高い人には、利尿薬の効果が高いという。実際、肥満や心不全の人が多い欧米では利尿薬がよく使われている。 「日本では、副作用が少ないARBやACE阻害薬がよく使用されています。薬によって違いはありますが、ARBの常用量で収縮期血圧は7~15㎜Hg程度下がり、最大用量では20㎜Hgくらい下げることも可能です。ただ、ARBやACE阻害薬だけでは十分に血圧が下がらない人も少なくありません。先ほど触れたタイプの違いをはじめ、とくに高齢者や動脈硬化が進んでいる人では収縮期血圧の上下変動が大きく血圧が急上昇するので、これを抑えるにはARBやACE阻害薬では限界があるのです」 このような場合、カルシウム拮抗薬の使用が効果的で、ARBと組み合わせることにより収縮期血圧を20~40㎜Hg程度下げられるケースもあるという。医療現場では、降圧作用が強いカルシウム拮抗薬が最初から使われる場合も多い。 「日本人は血管反応性が強いため、血管を拡張させる作用があるカルシウム拮抗薬が効きやすいといえます。軽症から中等度の高血圧症であれば、カルシウム拮抗薬単独かARBとの併用で、血圧の低下と安定化が可能になることが多い。ただ、カルシウム拮抗薬を高用量で使用すると、浮腫、頭痛、頻脈などの副作用が出る場合があるので注意が必要です」 ARBとカルシウム拮抗薬の組み合わせでも血圧が十分に下がらない場合は、β遮断薬やα遮断薬をプラスする選択がある。交感神経の働きを抑えることで心拍数を減らしたり、末梢血管を広げるなどして血圧を下げる効果がある。 「ARBとカルシウム拮抗薬に加え、利尿薬を併用する手もあります。塩分感受性の高い人では血圧がかなり下がるケースも見られ、利尿薬の使用によって、ARBかカルシウム拮抗薬のどちらかひとつに戻せる場合もあります。かつては利尿薬が第1選択薬として広く使われていましたが、頻尿や腎機能を悪くするリスクがあり、今は比較的若い患者さん以外ではあまり使われていません。ただ、減塩が不十分な場合など、注意して使えば効果的です」 まずは自分が飲んでいる降圧薬のタイプをきちんと把握して、血圧がきちんと下がらないようなら、担当医に薬の変更を相談したい。