【ゴールデンスピリット賞】巨人・菅野智之が受賞「介助犬ってすごい」 介助犬の育成・普及へ9年間「勝利数×10万円」寄付
プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第25回受賞者が13日、巨人・菅野智之投手(35)に決定した。2015年に「菅野基金」を設立し、「社会福祉法人日本介助犬協会」にシーズン公式戦勝利数×10万円をベースにした支援金を寄付。19年には同協会のサポート大使に就任した。寄付支援やPR活動への協力など、多方面でサポートを継続的に取り組んできたことが評価された。表彰式は近日中に都内で行う予定。 多くのタイトルを手にしてきた菅野に、プロ12年目で特別な勲章が加わった。「続けることを目標にやってきたので、そこを評価していただいて本当にうれしいです」。最多勝と最高勝率の2冠に輝いた今季、「球場外のMVP」の“タイトル”も加わり、声を弾ませ受賞の喜びを口にした。 3年目の15年12月、介助犬育成・普及を目的に「菅野基金」を設立。きっかけは「社会福祉法人日本介助犬協会」の橋本久美子会長から介助犬についての話を聞いたことだった。肢体障害者の日常生活をサポートするのが介助犬だが、育成に多額の経費と時間を要し、目の不自由な人の歩行を助ける盲導犬などと比べると社会認知度も低い。「これをやろう、と。社会貢献活動、慈善活動はプロ野球選手になってやりたいと思っていた一つでした」と活動を開始した。 昨年までの9年間で、支援金合計額は1585万円に上る。売上金が同協会の活動資金に充てられるグッズも展開し、PR活動にも積極的に協力。実際に介助犬の仕事を見た際には驚きもあった。「介助犬ってこれだけすごいんだと最初に見たときに一番感じました。本当に何でもできる。例えば冷蔵庫を開けて飲み物を持ってきてくれるし、ドアも開けてくれる。力も強い」。介助犬のすごさを世間に知ってもらいたい気持ちも大きい。 プロ入り後は自然災害時などで寄付した際に名前が公になるのを伏せてきたが、「ファンの方やいろいろな方に『菅野選手がそういうのをやっているんだったら私も募金してみようかな、グッズ買ってみようかな』とか、そういうところから広がることもあるのかな、とここ数年で考え方が変わってきました」と、プロとしての活動意義を口にした。 今オフは海外FA権を行使してのメジャー移籍を表明している。海を渡っても、社会貢献活動への思いは変わらない。「ジャイアンツを離れても、現役でやっているうちは続けていきたい。続けることによって、周りの人たちも何か興味を持ってもらえたらいいなと思います」。野球同様、こだわりを持って続ける。(田中 哲) 【選考経過】 DeNAを除く11球団からノミネートされた24選手、コーチから榊原委員が「期間も一つの視点」と14年間続けている阪神・西勇、10年間の菅野の名を挙げ、佐山委員も「2人は突出している」と同調するなど全委員が2人を推した。 その上で鈴木委員は「子供たちに勇気を与えている」とロッテ・中村の活動も評価。栗山委員は中日・山井コーチ、阪神・原口も推薦。三屋委員は「ずっと続けている山井コーチのポリシーを感じる」と語った。 依田委員は菅野、西勇、山井コーチを「3人とも強い目的意識を感じる」と評し、10年以上継続している点を重視。欠席した長嶋委員は書面で菅野、西勇に絞られるとし「菅野投手が復活してエース級の活躍が目立ちました」と推薦した。最終的に菅野と西勇が残り、社会的影響力、今季の好成績もプラス材料となり、満場一致で菅野の受賞が決定した。 ◆継続サポートに協会が感謝「認知度上がった」 菅野の受賞に、「社会福祉法人日本介助犬協会」は喜びとともに継続的なサポートに感謝を口にした。担当者の広報チーム・渡辺真子さんは「菅野さんからの発信で、介助犬の認知度が上がることにとてもご協力をいただけています。とてもうれしく思っております」と話した。 同協会は東京Dでの試合開催日に介助犬ブースを出展することもある。「前は『盲導犬?』と言われることがあったのが、今は『菅野投手の介助犬のところだね』と来てくださるお客さんもいて、浸透していると感じております」と実感を込めた。 1頭の育成に250~300万円を要する。毎年の寄付支援をしながら、PR写真や動画でも支援の輪を広げることに一役買っている。今回の受賞も、認知度がさらに広がるきっかけになるかもしれない。 ◆菅野 智之(すがの・ともゆき)1989年10月11日、神奈川・相模原市生まれ。35歳。東海大相模、東海大を経て2011年ドラフトで1位指名された日本ハムに入団せず、12年ドラフト1位で巨人入り。今季は15勝3敗で2度目の最高勝率と史上6人目となる4度目の最多勝。最優秀防御率4度、最多奪三振2度。14、20年MVP。17年から2年連続沢村賞。ベストナイン4度、ゴールデン・グラブ賞5度。17年WBC日本代表。186センチ、95キロ。右投右打。 ◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回、選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。社会貢献活動の表彰はMLBの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界最高の賞としてメジャーリーガーの憧れの的になっている。日本では球場外の功績を評価する表彰制度は同賞が初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。 ◆阿部雄二賞 本賞を第1回から協賛している株式会社アイ・インベストメントの代表取締役社長・阿部雄二氏が2001年4月9日に逝去したことを受け、報知新聞社が「阿部雄二賞」を創設した。 ◆第25回ゴールデンスピリット賞選考委員 栗山 英樹 2023年WBC日本代表監督 榊原 定征 プロ野球コミッショナー 佐山 和夫 ノンフィクション作家。メジャーリーグに造詣が深い。ゴールデンスピリット賞の提唱者の一人。2021年野球殿堂入り 鈴木 俊彦 日本赤十字社副社長 長嶋 茂雄 読売巨人軍終身名誉監督。現役時代のチャリティー活動が評価され、1982年に日本のプロ野球人として初めてローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見(えっけん)した。88年バチカン市国からバチカン有功十字勲章を受章 三屋 裕子 日本バスケットボール協会会長。バレーボール女子日本代表として84年ロス五輪銅メダル 依田 裕彦 報知新聞社代表取締役社長(敬称略・50音順)
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