スーパーGT、空気と水から作る夢の合成燃料”国産eフューエル”導入は2027年もしくは2028年から? 坂東代表、大阪オートメッセで発言「それが現時点での目標」
大阪オートメッセで行なわれたスーパーGTスペシャルステージで、同シリーズを運営するGTアソシエイションの坂東正明代表が、2027年もしくは2028年にeフューエルを使うことを目指したいと語った。 【ギャラリー】同一シーズンに日産GT500と国内トップフォーミュラを走らせたドライバーたち。スーパーフォーミュラに改称から11年で8人 スーパーGTのGT500クラスでは、2023年シーズンからカーボンニュートラル燃料を使用。本来ならばGT300クラスも同じタイミングでカーボンニュートラル燃料を使う予定だったが、各メーカーの対応が間に合わないなどしたため、これが延期に。ただ2024年シーズンからは、カーボンニュートラル燃料と従来の化石由来のガソリンを50%ずつ混ぜた混合燃料”R50”を使うことになっている。 ただカーボンニュートラル燃料には、その原料や製造方法などによって様々な種類がある。現在スーパーGTで使われているのは、ハルターマンカーレス製のバイオ燃料で、木材チップなどを原料にしている。 ただ坂東GTA代表は、将来的には国産eフューエルを使いたいと、大阪オートメッセのトークショーで改めて語った。 「現在は木材チップから作った燃料を使っています。これは、今までの化石燃料とは全然違うものです」 そう坂東代表は語った。 「最終的には、eフューエルと呼ばれる、二酸化炭素と水素を合成して作る燃料を、今のエンジンで使いたいと考えています。しかも、国産にしたいです」 eフューエルとは、大気中の二酸化炭素を分解して作った炭素と、水を電気分解して作る水素とを合成して作る燃料のこと。その成分は、基本的にはガソリンとほぼ同じであり、既存のエンジンでそのまま使うことができる。 技術的には既に出来上がっており、ほぼ同じ方法で作ったeフューエルを、2021年の段階でホンダがF1で実戦使用している。 ただ課題も多い。水を電気分解する時に使う電気を作る際、化石燃料を燃やして発電していては、二酸化炭素削減には繋がらない。つまりこの電気も再生可能電力……太陽光発電や風力発電といった、二酸化炭素を排出しないカタチで確保しなければいけないのだ。 また、現時点では生産能力が低いため、シリーズ全体で使う量を確保するのは簡単ではない。さらに生産量が少ないこともあり、価格も非常に高い。一説には、ガソリンの100倍以上する場合もあるという。 とはいえ、自動車産業をカーボンニュートラル化する上で、このeフューエルは実に重要なモノとなる可能性があり、電気自動車(EV)や水素と並ぶ将来の自動車のエネルギー源候補として、注目を浴び始めている。生産量や価格といった問題さえ解決できれば、既存の自動車、ガソリンスタンドなどをそのまま使えるため、最も確実な選択肢という見方もある。 それを踏まえ、坂東代表は2027年もしくは2028年に導入することを目指すとしている。 「メーカーさんにもお願いしながら、なんとか2027年とか2028年には、今のエンジンでそれを使えるようにしたいと思っています。そういうところが目標です」 「スーパー耐久は水素でレーシングカーを走らせるということをやっていますが、カーボンニュートラル実現には色々な解決策があると思います。でも給油したり、ピットで我々が求めていることについて考えれば、水素ではなくeフューエルだという考えに至りました。ですので、その方向で進めています」 坂東代表は以前から、今後も「音のあるレース」を続けていきたいと公言している。eフューエルが実現すれば、音の出るエンジンを当然残すことができるし、インフラ整備などを考えれば、eフューエル+エンジン車の組みわせが、一番現実的な未来の姿なのかもしれない。
田中 健一
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