部分連合、政権本腰 国民「準与党」扱いに警戒も 公明動揺、代表選び混沌〔深層探訪〕
石破政権は、衆院選での自民、公明両党の過半数割れを受け、国民民主党の取り込みを本格化させた。政策協議を通じた「部分連合」の実現を目指すが、国民側は「準与党」と見なされることを警戒。思惑通りに進むかは不透明だ。公明は、代表落選のショックで混乱が続いている。 【主な経歴】榛葉 賀津也(しんば かづや) ◇いら立ち 「部分連合とは何か」。国民の榛葉賀津也幹事長は31日、自民が求める「部分連合」の可能性を問う記者の言葉をさえぎり、気色ばんで「政策ごとに相談に乗り、お願いしていく。部分連合とかではない」と反論した。 榛葉氏のいら立ちは、一気に間合いを詰める自民の勢いに「のみ込まれた」と映ることへ、神経をとがらせているためだ。実際、これに先立つ両党の幹事長会談で、自民の森山裕幹事長は政調会長間の「協議の場」設置を提案。年末に向け本格化する税制改正についても「税調同士で協議していこう」と持ち掛けた。 税制改正の作業では毎年、業界団体などが「要望合戦」を展開。これをさばく自公の税制調査会は政権与党の「力の根源」(政府関係者)とされ、かつては首相官邸も手を出せない「聖域」と呼ばれた。実際に野党と擦り合わせれば極めて異例の事態となる。 ◇103万の壁 自民の念頭にあるのは、国民が重視する「年収103万円の壁」対策だ。国民の玉木雄一郎代表は31日、自民が協力を拒めば「予算も法律も通らない」と記者団に述べ、早くも踏み絵を迫った。 政府側は、国民の求めに応じて基礎控除などを拡大すれば「7兆~8兆円程度」の減収が見込まれると試算。財政健全化の観点から「次世代に悪影響を残すだけだ」と懸念の声が上がる。それでも、自民幹部は「年末の税調でやれるところまでやらなければならない」と、国民の取り込みに執念をみせる。 もっとも、政権維持になりふり構わぬ姿勢の自民に対し、国民は態度を曖昧にしたまま。「与野党の等距離に位置することが大事だ。自公が転んだときに責任を負うのは避けたい」。国民幹部はこう本音を漏らした。 ◇小政党 一方、公明の石井啓一代表は31日、埼玉14区での落選を受けて辞任を表明。獲得議席も8減の24議席となり、党内には「国民民主より少ない小政党になった」(関係者)と沈滞ムードが漂う。 石井氏は就任からわずか1カ月余り。想定外の新代表選びの行方は混沌(こんとん)としている。世代交代に向け、中堅・若手の抜てきを求める声も上がるが、自民と国民の接近を踏まえ、公明幹部は「経験の浅い党首では切り回せない」と懸念を示す。 公明にとっては、自民との政策協議などで実務を担ってきた中堅の多くが落選したことも痛手だ。「このままでは埋没しかねない」。党関係者は危機感をにじませた。