女優・河合優実への信頼感と期待 入江悠監督「難しい役から逃げずに向かってくれる直感があった」映画『あんのこと』インタビュー
入江監督「河合さんの力を借りて、僕も生身で世界に向き合うことができた」
――監督から見た俳優としての河合さんの魅力を教えてください。 入江監督:俳優としての河合優実さんは、映画とかドラマを見ている人たちが思っていることと変わらなくて、それを言葉にするのは難しいですね。それよりもこの映画は、俳優以前の河合優実さんが持っているものにゆだねていたところがあります。例えば、俳優でも経験を積んでくると引き出しが増えて、技術も豊富になります。でも、彼女はいろんなものを手放して、一人の人間として向き合ってくれるんじゃないかって。そこに賭けていたところがあって。だから本質以外はあまり見ていなかったんです。 ――人間を見ていたということですか? 入江監督:杏の部屋に入った瞬間に、どう空気を吸ってくれるか。どういう姿勢でいるのか、座るのか立つのか…。技術ではない、人に対する想像力というんでしょうか。そこに惹かれていたんです。僕もですし、カメラマンも、照明も録音も、その瞬間の河合さんを逃しちゃいけないというのがありました。 ――ゆだねられる演出は、河合さんはいかがでしたか。 河合:そう言っていただけてうれしいです。ありがとうございます。 入江監督:僕自身にも問題があって、20代の時に映画の仕事を始めて、積み重ねていくうちにいろんなものがついてくるんですよ。それを脱ぐのは難しくて。今回は河合さんの力を借りて、ちょっとだけ脱げた気がしています。経験ではなく、生身で世界に向き合うという感じですけど。映画は、フィクションも含めて、ドキュメンタリー的なところがあります。河合さんのこの年のタイミングで撮れたことは大きかったと思います。 ――河合さんは、今の若い年齢でこの作品に出会ったことについてどう思われますか。 河合:演技を始めて5年ですが、その短い中でも自分についてくるもの、積み重ねは感じます。作品によって役の考え方とか、事前準備も変わってきます。理屈を抜きにして、杏に真摯に向き合うっていうことだけに比較的フォーカスできたような気はしています。 ――ありがとうございます。最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。 入江監督:河合優実という人が本当に世界と向き合っている。杏という子が世界と向き合っていたのと一緒ですが、それをスクリーンで見ることができるのはとても豊かなことです。劇場に来る人たちにとってもそれぞれの杏がいるはず。遠い存在かもしれないし、近いかもしれないけど、その人の豊かさが感じられたら、それだけでもいいですね。 ――ありがとうございます。たくさんの人に映画が届くことを楽しみにしています。 取材・文:氏家裕子 写真:You Ishii
ABEMA TIMES編集部