【焦点区を歩く 2024年衆院選】金権政治に根強い忌避感 自公火消し 野党追い風 衆院選広島3区
「私が先頭に立ち信頼を取り戻す」。衆院選が公示された15日朝、広島3区の公明党前職斉藤鉄夫(72)=自民推薦=は広島市安佐南区の駐車場で開いた出陣式で気を吐いた。自民党派閥の裏金事件で政治不信が渦巻く中、その払拭を「与党統一候補」として誓った。 【衆院選2024】<1>よく分かる衆院選 衆院選のキホン 傍らには前回選に続き比例代表中国ブロックで出る自民党前職の石橋林太郎(46)が立っていた。 広島3区は2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件の主犯である元自民党衆院議員の地盤。事件の発端となった地域でもあり、金権政治への忌避感が根強い。自民党は21年前回選で候補の擁立を見送り、比例中国から転身を図った斉藤の支援に回った。 斉藤は今回も「政治とカネ」で逆風下の選挙となる中、陣営は新政権での国土交通相再任もPR材料に活用する。 対する野党は、裏金事件を追い風に与党批判票の取り込みを図る。 「政治とカネの問題に決着をつける時が来た」。15日、立憲民主党新人の東克哉(43)は安佐南区の街頭で息巻いた。 今回の衆院選では自民党が非公認とした「裏金議員」に公明党が推薦を決めたケースもあった。「連立政権にノーを突きつけられるか。震源地の有権者の行動がこれからの日本をつくる」。大規模買収事件も引き合いに批判の矛先を自公政権に向けた。 共産党は不祥事続きの自民党とともに公明党を「同じ穴のむじなだ」と切り捨てる。党新人の高見篤己(72)は15日の出発式の演説では「裏金は企業による献金で賄賂だ。自民党は裏金議員を非公認にしただけで幕引きは許されない」と徹底追及する構えをみせた。 高見は大規模買収事件の舞台となった19年の参院選広島選挙区に共産党候補として名を連ねていた。「あの時も裏金が買収に使われたのでは」と疑念を持つ。 与野党の思惑が入り乱れる3区には区割りの変更で安芸区が加わった。 16日は斉藤と東が入り街頭演説を展開。斉藤陣営の段取りは、自民党の市議が全て整えるなど与党間の連携で支持拡大を訴えた。東は区民の多くが新区割りの認識がないとみて買収事件に触れつつ票の掘り起こしを図った。17日は高見も区内で活動を予定する。 前回選では公明党前職の斉藤に対し、立憲民主党と日本維新の会の新人たち5人が挑んだ。自民、公明両党が結束して斉藤を支援する一方、野党支持票は分散。斉藤は2位以下に4万票以上の差を付けて圧勝した。今回は維新が直前になって公認候補の擁立を見送った。前回獲得した1万8千の「維新票」の行方も注目される。 無所属新人の玉田憲勲(67)は政党選挙の廃止を訴える。=敬称略 高見 篤己72 党県書記長 共 新 斉藤 鉄夫72 国土交通相 公 前 東 克哉43☆理学療法士 立 新 玉田 憲勲67 開業医 無 新 (届け出順、敬称略、☆は比例との重複立候補者) 小選挙区の新たな区割り後で初の衆院選(27日投開票)が幕を開けた。自民党派閥の裏金事件を機に広がった政治への不信感、人口減少や地方経済の疲弊といった課題に候補者はどう向き合うのか。区割りの変更の影響が大きい中国地方の選挙区に焦点を当て、選挙戦の現場を歩いた。
中国新聞社