廃タイヤは年間100万トンも発生! 公園の遊具ぐらいにしか……と思ったら実は90%もリサイクル等で「有効活用」されていた!!
自動車業界でも対応が急がれている「カーボンニュートラル」
数年前までは「地球温暖化」に対して懐疑的な見方をする人を多く見かけたものだが、このところ各地を襲っている豪雨などの被害を思えば、もはや気候変動を否定する人は少なくなっているのではないだろうか。地球全体の温暖化と狭い地域での気象現象をイコールでつなぐのもミスリードという批判もあるだろうが……。 【写真】本当に皮を剥ぐようにして張り替えられる! 注目のリトレッドタイヤとは というわけで、いまや自動車業界は「カーボンニュートラル(実質的にCO2排出量をゼロにすること)」を無視することはできなくなっている。そう遠くない将来には、新規に採掘した化石燃料を使うことが批判される時代となる可能性も、まったく否定できない状況といえる。 さらに、化石燃料から生まれる工業製品の代表格はプラスチックだが、こうした資源においても、無駄なく使うことが求められているのが現代といえる。より具体的にいえば、プラスチックのような資源については「3R」の環境対策が必須となっている。 これは、「Reduce(リデュース:削減)」、「Recycle(リサイクル:再資源)」、「Reuse(リユース:再利用)」という3つのRをまとめたもので、資源を循環させる社会を構築することにより、環境負荷を軽減しようというものだ。 さて、前置きが長くなってしまったが、クルマを走らせる上で、代表的な消耗部品であるタイヤについても「3R」対応が進んでいることはご存じだろうか。なにしろ、日本国内だけでも使用済み「廃タイヤ」は毎年100万トン近く発生している。しかし、それらはゴミになってしまうわけではない。結論からいえば、廃タイヤの9割以上は3R的に有効利用されている。 JATMA(一般社団法人 日本自動車タイヤ協会)の発表している数値を紹介しよう。 2023年に発生した廃タイヤは約9000万本。ちなみに、タイヤを履き替えた際と廃車になったクルマから取り出される場合に廃タイヤは生まれるが、同年における比率は86:14となっていたという。 前述したように、廃タイヤの再利用は進んでいる。そのなかでもっとも多いのが「サーマルリサイクル」で、廃タイヤにおける構成比は約64%となっている。これはタイヤを切断したり、破砕したりすることで細かくして、代替燃料として利用するというもの。ごみ処理として燃やすのではなく、燃料として活用しているというわけだ。 大型車用タイヤでは、リトレッドといってタイヤ表面を張り替える「更生タイヤ」が広まっているが、その土台として使うことで廃タイヤの発生を抑えるというソリューションもある。また、再生ゴムとして活用されることもあり、これら原形加工利用で15%前後になっているということだ。 そのほか、海外に中古タイヤとして輸出されるぶんも含めると、トータルでのリサイクル率は90%を超えるというのが現状。多くのユーザーが想像するよりもずっと3R対応が進んでいるのであった。 循環型社会というのは新規採掘を減らすモデルでもある。実際、化石燃料由来の合成ゴムを使わず、石油外天然資源だけでタイヤを作るという技術は、すでに実現している(ダンロップ・エナセーブ100)。また、有効活用の手段として、乗用車用タイヤでもリトレッドが広まっていくという見方もあるようだ。 長い間、見た目こそまったく変わっていない黒くて丸いタイヤは、環境対応に向けて着実に進化しているのである。
山本晋也