最初はボランティアから…51歳で外国人タレントの事務所設立した稲川素子さん、90歳で死去 心不全
数多くの外国人タレントが所属する芸能事務所「稲川素子事務所」の代表取締役社長・稲川素子(いながわ・もとこ)さんが、5月13日に心不全のため亡くなっていたことが11日、分かった。90歳だった。葬儀は近親者のみで営まれた。今後、しのぶ会の開催を予定している。 娘の佳奈子さんによると、素子さんは今年2月上旬に心臓の検査をした際に体調が悪化し、そのまま入院。その後、驚異的な回復力で同月下旬には退院し都内の自宅に帰宅した。ただ、佳奈子さんは「生涯現役を貫く母でしたが、年齢のこともあり、先が長くないことを悟っていたのかもしれません。しきりに周りへの感謝を口にしていました」と明かした。 亡くなる前日、母の日である5月12日には大好物のウニを食べ、元気な様子だったという。その日の夜は佳奈子さんの隣で就寝したが、翌朝には意識がなくなっていた。佳奈子さんは「寝息も聞こえていました。まさかでした」。最期は自宅で家族に看取られて天国に旅立った。ひつぎには、生前好きだったピンク色のバラを入れたという。 稲川さんは盲腸の手術を受けた際の医療ミスで、19歳の時に右半身不随に。22歳で結婚し、専業主婦を経て1985年4月に51歳で同事務所を設立した。きっかけは佳奈子さんがドラマのワンシーンに出演した時に撮影現場へ付いて行ったことだった。現場で外国人男性のキャストを探していたのを知った稲川さんは「知り合いがいる」と申し出。結局、その知り合いとは別の男性を紹介したが、その男性の演技が良く、稲川さんの元に依頼が来るようになったという。 当初はボランティアであっせんをしていたが、テレビ局関係者のアドバイスで会社化。外国人専門のプロモーターの先駆者となり、現在も所属するルビー・モレノ(58)やバラエティー番組で人気となったセイン・カミュ(53)、駐日ベナン大使も務めたゾマホンさん(59)らを輩出。事務所ホームページによると現在も世界142か国、5200人の外国人タレントが所属している。 稲川さんは知的好奇心にもあふれており、65歳で慶大に再入学し卒業。その後、東京大学の大学院で国際情勢などについて研究し、国際交流の専門家として、テレビの情報番組やバラエティー番組にも出演したほか、山梨・河口湖音楽と森の美術館の館長なども務めていた。
報知新聞社