非核化・自衛隊・靖国参拝…自民党総裁「3強候補」立場分析
石破氏、経験豊富だが党内勢力が足りず 小泉氏、当選すれば最年少首相 高市氏、安倍元首相に支援された極右
日本の次期首相を決定する自民党総裁選が27日に行われる。党総裁選史上最多となる9人の元職・現職閣僚の候補が出馬の意を表明したことは、逆説的に困難に陥った自民党の状態を示している。2024年の自民党総裁選のポスターには次のようなメッセージが書き込まれた。「時代は『誰』を求めるか?」 前例のないほど多くの候補が乱立したが、選挙終盤の情勢は、小泉進次郎元環境相(43)、石破茂元幹事長(67)、高市早苗経済安保担当相(63)の「三つ巴戦」で固まったかたちだ。日本テレビは21日、自民党党員・党友の電話世論調査で、石破氏が支持率31%、高市氏が27%、小泉氏が14%を占めたと報じた。議員票は小泉氏が先行しているという。23日に時事通信が自民党議員を対象に世論調査を行ったところ、小泉氏の支持議員が50人を超えて最も多く、高市氏と石破氏は30人前後が支持の意向を明らかにしたと報じた。 石破元幹事長は出馬会見で「38年間の政治生活の集大成として最後の戦い」という言葉を用いて今回の選挙で背水の陣を敷いた。5回目の総裁への挑戦だ。長い経歴は石破氏の最大の武器で、『政策至上主義』など単著だけで10冊を超える。12回当選の議員であり、幹事長2回、政務調査会長を1回経験し、閣僚では防衛庁長官、防衛相、地方創生・国家戦略特別区域担当相などを歴任した。日本で最も人口が少ない地方自治体である鳥取県に選挙区がある石破氏は、人口減少と地方経済に取り組んできた。 石破氏は、2018年の韓国最高裁(大法院)の強制動員賠償判決の後、「(韓国最高裁の)判決は国際法的に間違っている」としながらも、「(植民地支配が)合法であっても独立国だった韓国を併合し、(朝鮮半島出身者の)名字を変えることが行われた。そういう歴史があったことをどれだけ認識するかだ」と述べたことがある。 しかし、石破氏は基本的には保守政治家であり、最近出した著書『保守政治家 わが政策、わが天命』でもこの点を強調している。石破氏はこの著書で、現行の日本の平和憲法の核といえる戦力保有を禁止した9条2項を削除し、自衛隊を「国防軍」と規定する憲法改正をしようと主張する。ただし、総裁選の出馬宣言後には、最近になり自民党が憲法9条の条文はそのままにしておき、自衛隊の根拠規定を新設する案に論点が整理されたことに従うとする立場を明らかにしている。自衛隊の根拠規定案は、2017年に当時の安倍晋三首相が主張した内容だ。石破氏は「アジア版NATO」の創設を主張し、在日米軍の関連協定である日米地位協定の改正も主張する。 弱点は党内勢力の少なさだ。このため、石破氏は2015年に自身が率いる派閥である「石破派」を作ったが、勢力を拡大できず、2021年には緩やかな議員連盟に再編され、事実上解体された。 小泉元環境相は小泉純一郎元首相の息子で、当選すれば日本の歴代最年少の首相になる。現時点での最年少首相は44歳で首相になった伊藤博文だ。小泉氏は派閥に初めから関与しておらず、自民党最大のアキレス腱である裏金問題からも比較的自由だ。 全面的に「憲法改正」と「強い経済・外交」を前面に出している。日本をめぐる環境が急変し、時代の変化に応じて憲法も変わらなければならないとして、自衛隊の設立根拠を憲法に明示すべきだと主張する。 石破氏が憲法改正を急に推進する意志はないと表明している反面、小泉氏は首相になれば全力を尽くして国会で憲法議論を推進すると強調する。小泉氏は太平洋戦争のA級戦犯が合祀されている靖国神社を毎年8月15日に参拝してきた。小泉氏は、自民党総裁選の出馬を宣言した6日、総裁になってからも靖国神社に参拝するのかと質問されると、「適切に判断する」として明確に答えなかった。経済セクターでは「賃上げの加速や人手不足の解消、それに正規・非正規の収入の格差を解消するために労働市場改革(解雇規制緩和)を抜本的にやっていきたい」と主張し、世論の反発を受けたりもした。小泉氏は無派閥議員の間で影響力が強い菅義偉前首相の支持を得ている。 強みは若くて改革的なイメージだが、弱点は経験不足に対する懸念だ。環境相だった2019年、米国ニューヨークで開かれた国連総会で、気候変動についての質問に「気候変動のような大規模な問題に取り組むとき、それは楽しくなければならず、クールでなければなりません。それもセクシーでなければなりません」と述べて批判を受けたことが有名だ。 極右派の高市早苗経済安保相は、今回の選挙中盤に最大の「ダークホース」として浮上した。公式の選挙運動の開始後、一部の世論調査では小泉氏と石破氏を上回るなど波紋を呼んでいる。 高市氏は、2022年に東京で開かれた講演で、首相になっても靖国参拝を続けると公言した。高市氏は韓国と中国からの批判の予想に対して「途中で参拝を止めたり、中途半端なことをするから相手がつけあがる面はある」と述べた。憲法9条2項を削除する内容の憲法改正を主張してきた。 9日にはテレビ番組に出演し、「核兵器は保有しない、製造もしない、持ち込まない」という日本の「非核3原則」のうち、核兵器を持ち込まないという部分を再検討できると述べた。非核3原則を形骸化しうるという発言だ。 高市氏は民放テレビのアンカー出身で、所属派閥はないが、2021年の総裁選のときには安倍晋三元首相の支持を得て、1回目の投票では3位になった。今回の出馬宣言でも安倍元首相に何度も言及し、高市氏を支持する議員のなかには旧安倍派が多い。スローガンで「日本列島を強く、豊かに」を掲げ、金融緩和を行い経済を生かすという公約が目につく。「アベノミクス」を事実上継承している。高市氏をよく知るジャーナリストが「キティちゃん好きのヘビースモーカー」「『おっさん』と『乙女』の両面を併せ持つ」と評価するほどの独特のキャラクターでも知られている。 「ビッグ3」が支持率の70%ほどを占めており、残りの候補6人は事実上先頭グループから遠ざかった。さらに、林芳正官房長官は22日に石川県の豪雨状況が深刻化すると「災害対応を陣頭指揮する」として、選挙活動の中止を宣言した。上川陽子外相は23日に米国ニューヨークで開かれる国連総会を控え、「国益をかけて外交に携わってきた私としては、何としても(総裁選挙のために席を)空白にするわけにはいかない」として、米国に出発するなど、選挙終盤の4位以下のグループはやや勢いが削がれた状況だ。河野太郎デジタル担当相は、現在日本が保有していない原子力潜水艦の保有について肯定的な発言をするなど、出馬候補の大部分が外交・安全保障分野でタカ派的な発言をしている点も、今回の総裁選挙の特徴だ。ウクライナ戦争勃発などで国際安全保障環境が厳しくなった影響と、日本の保守化、選挙で目立つためなどの理由が複合的に作用したとみられる。 自民党総裁選は1回目の投票で党の現役国会議員368人が1票ずつ、全国105万人の党員・党友の投票を368票に分けて比例配分する。過半数を得た候補がいなければ、上位2人が決選に進む。国会議員は全員改めて投票するが、党員・党友は1回目の投票の結果を活用する方式で合計47票だけが与えられる。日本の都道府県の数と同じで、1回目の投票で得た票数を各都道府県別に集計し、相手より党員・党友票を1票でも多く得た候補がその地域に配分された「1票」を持っていく。 東京/ホン・ソクジェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )