お初天神近く「豚活(とんかつ)」の店。こだわりの製法で/大阪
近松門左衛門「曽根崎心中」ゆかりの地である大阪市北区の露天神社は「お初天神」の通称でも広く知られている。ビル街に囲まれた都会の神社境内から1分足らずの場所に、レトロな建物で営業する飲食店が建ちならぶ。その中に「豚活」と書かれたのれんを見つけた。これはいったい何の意味を示すのか? のれんをくぐってみた。 和のテイストを感じる店内はカウンター10席。店にいた「たく屋」店主の橋口拓矢さん(42)に「豚活」について聞くと「豚肉を活かすとかいて『とんかつ』と読みます」と語る。しかも、この言葉は商標を取っているという。
ドイツ産の塩とスダチが味をひきたてる
メニューには「ロース活」「ヒレ活」などの文字が躍る。産地や調理法を聞くと「それはだれにも明かしてないんです」と笑顔の橋口さん。時間をかけ、こだわりの製法で作りあげ網目の器に盛り付けた「ロース活」を差し出した。 「これをつけて食べてください」と一緒に渡されたのは、黒い皿に粉雪のようにふられたドイツ産の塩とスダチ。じっくりとあげて仕上げた一口大の「豚活」は、サクッとした歯ごたえと、あっさりした食べやすさ。そして塩とスダチがその味をさらに引き立てる。
日本2周の旅で人の優しさと「味」にふれ
2001年開店。それまでは清掃関係の仕事をしていたが、ビルの3階から落ち大ケガを負った。長いリハビリ生活に耐えた後、1人で日本2周の旅に。人の優しさにふれ、いろんな味にもふれた。そして、大阪のとある飲食店で食事を楽しんでいた時、店の人に「お初天神の店が空いた。店をやってみるか」と聞かれ開店を決断。さまざまな味の研究を重ね、こだわりの製法を生み出した結果、今ではテレビや新聞でも取り上げられ、予約が必要な店となった。雰囲気の良さから、企業の役員なども多く訪れるという。 開店時は宣伝もなしで、まったくのゼロからの状態でスタート。「兄弟ら家族が助けてくれた。お客さんの紹介で妻とも出会い、子どもも生まれた。もう、ここでなければやっていけませんね」。営業時間は午後5時半から午前0時まで。定休日・日曜。