自立更生の鍵は“昭和のちゃぶ台” 「本音を話せる場所があることが少年たちの自立・更生につながる」 愛知・豊田市
「当時の自分には今の生活は考えもつかない」 支援を受けて更生した男性の今
ちゃぶ台作りが進んでいたある日、渋谷さんは健さんの自宅を訪れました。 今まで渋谷さんから仕事の斡旋や食料支給などの支援を受けてきた健さんは、現在、運送会社で働きながら彼女と生活しています。この日は、渋谷さんへ近況報告することになっていたのです。 健さんは、5月6月は給料が上がること、食費がカツカツで節約していること、激安スーパーで大量に買って考えながらやりくりしていることなど、日常の些細な事まで渋谷さんに報告します。渋谷さんはその報告一つ一つに話に耳を傾けながら、うれしそうに微笑んでいました。
近況報告が終わると、健さんたちが渋谷さんに手料理を振る舞いました。食卓に並んだのは山盛りのから揚げ。 健さんが渋谷さんと出会ったのは16歳の高校生の時。21歳になった今では、自分で稼いだお金で部屋を借り、彼女と生活して、中型の免許も取りました。「当時の自分には、今の生活は考えもつかない」と、健さんは話します。 そんな健さんの言葉を聞いた渋谷さんは、「最高においしいから揚げだね」と二人の手料理を頬張っていました。
ついに完成した“昭和のちゃぶ台” 「温かい笑顔が増えていくような場所に」
ホームのみんなで作った楓の一枚板のちゃぶ台が、2か月かけてついに完成しました。ずっしりと重厚感のある分厚い天板で、想像以上に立派なちゃぶ台になったようです。入所している少年たちも加勢してホームに運び込み、ちゃぶ台がリビングに置かれました。渋谷さんも「ようがんばった」と満面の笑みを浮かべます。
早速、ま新しいちゃぶ台を囲んでの初めての団らんです。入所少年、スタッフ、みんなで一緒に手巻き寿司を頬張ります。7.5合炊いたご飯もどんどんなくなっていきました。
念願だった“ちゃぶ台での団らん”を実現した渋谷さんに感想を聞いてみると、こんな言葉が返ってきました。 「陽和ハウス」 渋谷幸靖さん: 「子どもたちが喜んでくれている姿とか、ひとつになれたなという感じがして、やっと今日からスタートだなっていう気持ちでいます。食を通して、ちゃぶ台を通して、温かい笑顔が増えていくような場所にしていきたいなと思っています」 いい日も悪い日もちゃぶ台を囲みながら、和気あいあいと他愛のない話をし、時には悩みや本音をぶつけあう。今はまだ新品でピカピカのちゃぶ台ですが、これからたくさんの少年たちが、このちゃぶ台を通して安らぎを得て、自立更生への道を歩んでいくことになりそうです。