スウェーデンのNATO加盟はプーチン大統領の「オウンゴール」
ロシアにとって痛手となる動きが続いている
飯田)バルト海のいちばん奥にサンクトペテルブルクがあり、その下にバルト三国がある。対岸はスウェーデンで、これを獲られてしまうと、バルト海は完全にNATOの海になるのですか? 山川)そうですね。よく中国の安全保障を考えるとき、日本列島から台湾、フィリピンなどが蓋をしていると言いますよね。 飯田)第1列島線ですね。 山川)中国は秘密裏に「潜水艦が太平洋に行ける航路を確保したい」と言われますが、ロシアにしてみると、バルト海や黒海は重要なわけです。今後はそのバルト海において、かなり自由が制限されますから、ロシアにとって痛手になるような動きが続くことになります。
「ウクライナだけはNATOに加盟させない」という条件のもとに停戦協議が行われる可能性も
飯田)黒海はまさにウクライナとの戦争の最前線でもあるし、出口はトルコがずっと監視しているわけですよね。 山川)ですから、ウクライナは犠牲になってしまっているところがあり、本当に気の毒です。今回はウクライナが犠牲になって、フィンランドやスウェーデンがNATOに加盟した。でも、これだけNATO加盟国が増えたので、「ウクライナだけは絶対にNATOに加盟させない」という条件のもと、いろいろな停戦協議が行われる可能性もあります。 飯田)ロシアがそういう条件を出してくるかも知れない。 山川)バルト海がふさがれると黒海がさらに大事になるので、「黒海だけは絶対に確保する」となる。そういう意味では、「ウクライナの犠牲のもとに他国が結束している」という状態です。
米下院が予算を通すかどうかがウクライナの生命線になっている
飯田)だからこそ、ヨーロッパの支援が大事になりますか? 山川)ヨーロッパはヨーロッパで動いていますが、いちばんの焦点はアメリカです。下院が支援予算を通すかどうか。ここがいま、ウクライナ情勢を考える上で生命線になっています。 飯田)予算に関しては、やはりアメリカ大統領選の行方によりますが、共和党が首を縦に振らない。 山川)共和党内にも「支援した方がいい」という意見の人はいるのですが、やはりトランプ氏にみんな忖度しているわけです。このまま下院で審議が継続して行われない場合は、また別の突破口がありますので、ウクライナへの支援予算が通るかどうかは五分五分だと思います。