コンビニおにぎりに異物が混入、その事実は公表すべきなのか?
表向きの顧客対応で済ましてはならない
リスクコミュニケーションの専門家である石川慶子さんは、異物混入問題公表の判断について、「健康被害があったかどうかが1つのポイントになる」と指摘。「被害が拡大する恐れがある場合はほぼ確実に公表にいたる」として、健康被害と被害拡大の可能性の有無が目安になると話す。 石川さんは「何でも公表すると混乱を招きかねないので、すべてを公表する必要はない」とする一方、「たとえ1件だけでも、大したことがないと思わず事態を軽視しないことが大切。同じ指摘がないか、工場のラインは大丈夫かなど深刻に受け止めて調査することが必要」と話し、表向きの顧客対応で済ましてはならないと釘をさす。
後を絶たない食料品への異物混入に関する相談件数
国民生活センターによると、食料品への異物混入に関する相談件数は2009年度から2012年度までは1000件台後半で推移していたが、アクリフーズ(現マルハニチロ)の冷凍食品への農薬混入事件が発生した2013年度は6221件と大幅に増加。それ以降は、3000件前後で推移しており、2016年度は2495件だった。 ツイッターなどSNSでは、異物混入に関する投稿を目にするのは珍しいことではない。2014年には、まるか食品の人気カップ麺「ペヤングソースやきそば」のように、混入する異物の種類によっては、大きな騒ぎになる、いわゆる「炎上」するケースもある。 石川さんは、食品業界において、異物混入は避けられない問題だとことわったうえで、「世の中には攻撃的な人も存在するので、異物混入問題の公表・自主回収の判断基準を公表すると、逆手に取られて良からぬ事態に陥る可能性があるとの懸念があるのだろう」と慎重なリスクマネジメントと炎上は紙一重であることを強調した。
結論が出る前に判断がくだされるなぜ
7月18日、Aさんのもとに、おにぎりの製造メーカーから原因究明調査の最終報告がメールで届いた。混入していた異物は、長さ約81ミリメートル、幅約13ミリメートル、厚さ約0.7ミリメートルのポリエステル樹脂と判明したが、混入原因の特定には至らなかったとの結論だった。 Aさんは「私は炎上させようという意図はまったくない」と話す。しかし、混入を非公表とした判断は、調査中に下されている。原因が不明なのに、なぜ「拡散性が低い」と判断されたのか? 釈然としない思いは残りながらも「自分としてはもう、この話は終わりでいい」とAさんは静かに話した。 (取材・文:具志堅浩二)