理学療法士になる予定が演技の道へ… アカデミー賞で注目のユ・テオの素顔 人生を変えた“恩師の一言”とは
「男らしくあること」の意味を再定義できるようになった
このような、抑制されたヘソンという男性像は、新たな男性像でもある。ユ・テオはこの映画の公式プレスシートのインタビューでも、「ジョンやヘソンのような男性は、繊細であることや、自分の弱さを見せることには全く問題を感じません。または優しい面を見せることも。恋愛関係において、男らしくあることの意味を僕らが再定義できるようになった、というのは、すごく美しいことだと思います。それが何を意味するにしても、女性軽視することなく、過剰にマスキュリンであることもなく」と語っている。 「僕はいろんな国で演じてきたこともあって、精神的面でも感情的な面でも、多様性が認められてきているなということは実感していました。メディアを見ていても、Z世代などが出てきたこともあり、様々な感性が受け入れられる社会が出来上がってきたなと感じるんですね。やっぱり1980年代、90年代っていうのは、映画の中の男性というのは一面的に描かれていました。でも、今は社会的にというよりも、感情的な部分でも、男性の多面的な部分が映画の中で見られるようになったと実感しています。 しかも以前の映画では、男性監督が男性を描いていることが多かったですよね。でも、今回の『パスト ライブス/再会』では、女性監督であるセリーヌが男性の感性を描いているということもあり、男性の中にもある繊細さを深く理解して表現してくれたのではないかと思います。 だから僕もヘソンを演じる上で、繊細な部分をさらけ出すことができたのではないかと思います」 ユ・テオ 1981年生まれ、ドイツ・ケルン出身。高校を卒業後、ニューヨークのリーストラスバーグ演劇学校で演技を学び、ロンドンの王立演劇学校の集中コースに通う。ニューヨークとベルリンで独立系の映画や演劇作品に出演してキャリアを重ね、2009年よりソウルに拠点を移す。近年の出演作に、「保健教師アン・ウニョン」(20/Netflix)、『担保』(20)、『別れる決心』(22)、「その恋、断固お断りします」(23/Netflix)など。
西森路代