相続税90%を求める遺産相続人、40億円の使い道を見知らぬ人々に委ねる(海外)
オーストリアの遺産相続人、マレーネ・エンゲルホルンは見ず知らずの50人に、相続した2700万ドルの分配について相談した。 エンゲルホルンは先祖が裕福な実業家で、超富裕層への増税を提唱している。 相談を受けた50人のグループは、寄付先として環境団体や女性団体を含む77の慈善事業を提案した。 今年初め、32歳のオーストリアの遺産相続人が、見ず知らずの人々に相談し、自身が相続した遺産約2700万ドル(約42億7000万円)の最も良い分配方法を決定した。 「Guter Rat für Rückverteilung(再配分のための良きアドバイス)」というグループが、そのお金の使い道について決定を下した。 77の慈善事業に、数年にわたって寄付される予定だと同グループは述べ、女性保護団体、子どもたちのための慈善団体、気候危機に関する団体などが含まれるという。 最も高額なのは環境団体のNaturschutzbund Österreich(オーストリア自然保護協会)に割り当てられた175万ドル(約2億7700万円)だ。世界不平等研究所(World Inequality Lab)、国境なき記者団(Reporters Without Borders)、カトリック系慈善団体のカリタス(Caritas)も寄付先となっている。 マレーネ・エンゲルホルン(Marlene Engelhorn)は、フリードリッヒ・エンゲルホルン(Friedrich Englehorn)の子孫として遺産を相続した。19世紀のドイツの実業家フリードリッヒ・エンゲルホルンはBASFの創業者で、同社は今や世界最大の総合化学メーカーだ。 祖母であるトラウドル・エンゲルホルン=ベキアット(Traudl Engelhorn-Vechiatto)が2022年9月に亡くなり遺産を相続したエンゲルホルンは、無作為に選ばれたオーストリア国民に招待状を出し、自身が受け取った富の再分配について相談した。 最終的に、16歳から85歳までの50人が選ばれ、大金の使い道を決めた。 彼らはさまざまな職業、立場の人々で、6度にわたって週末に集まり、再分配、貧困調査、法律の専門家にヒアリングを行い、決断を下した。 参加者には報酬として、託児費および交通費が支払われた。 エンゲルホルンの寄付の内容を他人に決めさせるという決断は多くの注目を集めた。 このミッションに関する声明の中で、エンゲルホルンはその動機について説明している。 「我々の税制度では、すでに裕福な暮らしをしている人々が優遇されている。労働に対する税金は高いけれど、富に対する税金は低いか、まったくかからない」 またガーディアン(The Guardian)に対しても、「富を再分配しないことは、富を再分配するということと同じ決定だ」と語った。 エンゲルホルンは以前、相続に対し90%課税するように国に求め、働いたわけでもないのにそのような大金を受け取るのは「不公平」だと2022年にル・モンド(Le Monde)に話した。 オーストリアは2008年に相続税を廃止した。 エンゲルホルンは世界の超富裕層への増税を提唱している。また、ドイツ語圏の富裕層を集めた、タックス・ミー・ナウ(Tax Me Now)を共同で設立し、世界の指導者たちに対して、超富裕層への課税を呼びかけている。 Business Insiderはタックス・ミー・ナウ経由でコメントを求めたが、エンゲルホルンからの回答はなかった。
Joshua Zitser