【記者のベストレース2024】まさに〝一変〟のセントライト記念 何もかもを変えてしまうルメールの手綱/渡辺薫
渡辺薫【セントライト記念・アーバンシック】
人馬のサジ加減ひとつでこうまで勝敗が左右されるのか…と改めて認識させられたのが、GⅡセントライト記念を勝ったアーバンシック=C・ルメールのコンビだ。 デビューからダービーまでの4戦(2勝)は横山武が手綱を取っていた。札幌のデビュー戦こそ10頭立ての4~5番手を追走したものの、その後の4戦は判を押したように最後の直線に入ってからの勝負。ただ、当時のアーバンシックはスタートで1完歩遅れる癖があり、さらに気性面も荒ぶるところがあった。必然的に折り合いにも注意せざるを得ず、この戦法もやむを得ない選択だったのだろう。 ところが、だ。セントライト記念でルメールにスイッチすると、スタートは普通に切るわ、道中はじわじわと追い上げるわ、勝負どころの4コーナーではきっちり射程圏を確保するという一変ぶり。こうなると、あとは自慢の末脚が黙っていない。Ⅴ目前のコスモキュランダを一気に捕らえて、1馬身3/4差の完全Ⅴ。こんなアーバンシックは見たことがなかった。 まさしく人馬一体。名コンビの業としか言いようがない。記憶に残るセントライト記念だった。
渡辺 薫