北朝鮮のサイバー攻撃、ソニー本社と安倍政権に火の粉
オバマ大統領が異例の言及、背景にある米国文化
ハッカー集団は12月16日、映画『ザ・インタビュー』の上映映画館を標的にしたテロを予告した。上映を取りやめる映画館が相次いだため、ソニー・ピクチャーズは12月17日に同作品の劇場公開の中止を決定。しかし、この決定に対しては、米政界・米メディアから「表現の自由を損なう行為」との批判が集中した。 19日になって、米連邦捜査局(FBI)は、ソニー・ピクチャーズが受けていた大規模なハッキングを北朝鮮による犯行と断定。オバマ大統領はこれを受け、北朝鮮に「相応の対応を行う」と発言したことに加え「ソニー」が同作品の劇場公開を中止したのは間違いだったとの見方を示した。 毎日新聞社でワシントン特派員も務めた重村教授は「米国の大統領がソニーを名指しで見解を述べるのは極めて異例」と指摘する。その上で、「チャップリンがヒトラーを批判した『独裁者』をはじめ、米国の映画産業は人権の擁護や表現の自由を体現してきた。オバマ大統領があえてソニーに言及したのは、平井社長の事前介入が米国文明と価値観を否定する行為と写ったからだろう」と話した。 さらに、ソニー本社とソニー・ピクチャーズの幹部らが年明けに議会公聴会へ招集されるとの観測もあるといい、「劇場公開の中止という決定に、ソニー本社がどこまで介入したのかが大きな争点になるだろう」と重村教授は見ている。 ただ、映画『ザ・インタビュー』の内容に関しては、映画評論家が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで酷評しており、いくら北朝鮮といえども他国の指導者を揶揄するには、作品が安易すぎたとの声が出ているのも確かだ。 重村教授は「北朝鮮の政治の大半は、主君への忠誠心競争だ。国連人権法案もそうだが、指導者の名誉は決死擁護のスローガンで、命がけで守り通そうとする。製作サイドに、金正恩暗殺というテーマを選べば当然こういった事態になるという覚悟があったのか」と疑問を呈した。