<ライブレポート>DIR EN GREY、狂乱の一夜と化した【PSYCHONNECT】再演
1999年に1stアルバム『GAUZE』をリリースしたDIR EN GREY。その『GAUZE』を引っさげて当時開催されたツアーが【PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?-】だ。デビュー15周年を迎えた2014年には【TOUR14 PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?-】と題した再演ツアーを開催した彼らだが、それから10年。再び『GAUZE』の世界観が解き放たれた。 その他の画像 2024年4月からスタートしている【TOUR24 PSYCHONNECT】。そのホール日程最終日となった6月27日のLINE CUBE SHIBUYA公演の模様をお届けする。 会場が暗転すると、SE「GAUZE -mode of adam-」が流れ出す。ステージのスクリーンには同曲のMVが投影される(『GAUZE』はすべての収録曲にMVが制作されたことも特徴的だ)。1999年当時の雰囲気なども感じさせるサイバーなテイストの映像の中、メンバーが一人ずつステージへ。デビュー当時の雰囲気も交えつつ、それぞれがより深みのある衣装やメイクを纏っているのが印象的だ。 ライブは「304号室、白死の桜」からスタート。切なさ漂うメロディアスな名曲に会場が揺れる。そこから、2024年に再・再構築されたデビュー曲「残」で早くも渋谷を地獄の底へと変貌させると、インディーズ時代のシングル『JEALOUS』のカップリング「Unknown…Despair…a Lost」を約14年ぶりの披露となるオリジナルバージョンで投下。Dieの熱いギターソロなど、サウンドは間違いなくアップデートされているものの、会場の空気感はすっかり90’sだ。 Toshiyaのベースソロが光る名シングル「Cage」、ダンサブルな「raison detre」と『GAUZE』の中でもキャッチーな曲たちが続く。特に「raison detre」みたいな楽曲は2000年代以降のDIR EN GREYには見られない作風なため、改めて演奏されていること自体に斬新さを感じる。京(Voice)も随所で身体を踊らせていたのも印象的だった。 初期曲が続く流れの中、突如深淵の底から鳴っているようなグロウルが響き、「The Perfume of Sins」が始まる。最新アルバム『PHALARIS』収録のヘヴィでプログレッシブな1曲だ。直前の曲たちと比べると同じバンドとは思えないサウンドの振り幅だ。京の歌唱も初期曲と比べてさらに幅広いスキルを駆使しており、バンドがこれまでたどってきた進化を実感せざるをえない説得力だ。そこから、最新シングルの表題曲「The Devil In Me」へと流れ込む。生々しくも神秘的な表現はスクリーンに投影される映像によってさらなる深みへと観客を誘う。まさしく新境地だと言えるだろう。 近年の楽曲が続いた後、不気味なシタールの旋律が鳴りだす。中絶をテーマとした初期の長尺曲「mazohyst of decadence」だ。薫(Gt)、Die、Toshiyaが奏でるドゥーミーな音像と京の狂気的なパフォーマンスには自然と目と耳がくぎ付けになる。演奏されているのは、2010年代からライブで披露してきたアレンジを基にした再構築版ではあるものの、直前に披露された近年の大作とここまで違和感なく溶け込んでいるのはさすがだ。初期から今に至るまで、彼らの音楽には共通の芯があると再認識できるブロックだった。 直前の絶望的世界観を浄化するように、儚くも美しい「空谷の跫音」では京のハイトーンが壮大に響き渡る。Shinyaのドラムの力強さもより一層際立つ名曲だ。その後は再び『GAUZE』モードへ。切なくもポップに跳ねるデビュー曲「ゆらめき」。会場が京と共に懐かしい“振り”で一つになった「MASK」。前回の『GAUZE』再演以来10年ぶり披露となった原曲の「蜜と唾」。会場の空気感は完全に90年代。そしてボルテージはどんどん上昇していく。素晴らしい熱さだ。 本編最終盤も勢いを緩めることなくエネルギーをぶつけるメンバー。インディーズ時代からデビュー後数年まで定番曲で、正式には音源化されていない原曲の「業」が飛び出すと、辺り一面はヘドバンの海に。そして、ラストは<Geist Seele Wille Zelle>のシャウトで圧倒的な一体感を生み出すメタリックな「Schweinの椅子」を荒々しく叩きつけた。 メンバーがステージを去ると、11月から【TOUR24 WHO IS THIS HELL FOR?】と題したツアーが開催されることがスクリーンに告知され、大歓声が上がった。なお、この発表についてメンバーから言及されることはなかったが、それもまた彼ららしい。 アンコールは昔からファン人気が高い名バラード「アクロの丘」でスタート。京の歌唱はもちろん、Dieの奏でるアコースティックギターやToshiyaのテクニカルなベースソロなど、なんど聴いても新たな魅力が見えてくる楽曲だ。さらに、DIR EN GREYのディスコグラフィーを見渡しても異質なくらいポップなシングル曲「予感」が爽やかに続く。このようなツアーでないと聴く機会が無い名曲に会場も聞き入っている。 「渋谷!!お前ら全員の声聴かせてくれ!」と京が叫び「Sustain the untruth」が始まる。いよいよ体力に追い打ちをかけてくるラストスパートだ。京の煽りに応え、随所で大合唱が発生し、この曲ならではのパワーを存分に見せつける。「かかってこい!」そのままスピードチューン「詩踏み」になだれ込む。本曲には京の巧みな技術が特に詰まっており、毎度あっけにとられてしまう。 「渋谷、生きてんだろ!お前ら全員の首をこっちに持ってこい!!」とどめの一発に選ばれたのは「秒「」深」。原曲はインディーズ時代のものだが、今回のツアーで披露されているのは、よりヘヴィで強靭なアレンジが施された『six Ugly』収録バージョンだ。京が「こっち見んじゃねぇ!」と煽り、会場はヘドバンのみが繰り広げられる空間に変貌する。14年ぶりに響き渡る轟音の破壊力は痛快の一言。“このままライブ終盤の定番曲に定着してもいいのでは?”と思うくらい体力を搾り取ることに適した楽曲だと身をもって改めて実感できた。 メンバーがそれぞれピックやタオルを投げ、ステージを去ってもアンコールの声は一切鳴りやまない。鳴りやむ気配もない。結果的にダブルアンコールは行われなかったが、それくらい満足度の高いライブだったという証明だろう。彼らの新旧違和感なく織り交ぜることができるセンスはさすがの一言だ。改めて『GAUZE』と向き合った彼らが年末のツアーでどのような姿を見せるのか、今から楽しみで仕方ない。 Text:Haruki Saito Photos:尾形隆夫 ◎公演情報 【TOUR24 PSYCHONNECT】 2024年6月27日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA <セットリスト> SE. GAUZE -mode of adam- 1. 304号室、白死の桜 2. 残 3. Unknown…Despair…a Lost 4. Cage 5. raison detre 6. The Perfume of Sins 7. The Devil In Me 8. mazohyst of decadence 9. 空谷の跫音 10. ゆらめき 11. MASK 12. 蜜と唾 13. 業 14. Schweinの椅子 アンコール: 15. アクロの丘 16. 予感 17. Sustain the untruth 18. 詩踏み 19. 秒「」深