独ピアニスト、アリス＝紗良・オット 過去のクラシックを「いま生きている音楽」に
「突然アイデアを思いつくのです。湧き出てくるのです。いざやるとなったら48時間、72時間でも集中してやります」。ドイツのピアニスト、アリス＝紗良・オット（36）はこう話す。彼女のコンサートやCDは毎回、アイデアあふれるプログラムで驚かされたり、感心させられたりする。演奏とともにそのコンセプトは、過去のクラシック作品をいま生きている音楽として提示する。このほど来日、来年リリースする新たな2枚のアルバムについても話してくれた。 ■なぜ同じことをしてはいけないの 昨年、すみだトリフォニーホールで行われたリサイタルのタイトルは「エコーズ・オヴ・ライフ」。「今日のクラシックの音楽家としての自分の役割や、どのように芸術的な視野を広げていきたいかを描いた音楽と映像による旅」とする。トルコ生まれの建築家、ハカン・デミレルとのコラボレーションで、デミレルの建築的要素を反映させるためにデザインしたデジタル・ビデオ・インスタレーションが上映された。ショパンの「24の前奏曲」を数曲ずつ分け、間にトリスターノ、リゲティ、ロータ、武満、ペルトらの現代曲をはさみ、最後は自身の作品で締めくくった。 彼女は言う。「私たちが現在、その音楽を高く評価している作曲家たちについて考えてみると、彼らは常に音楽そのものと、それを取り巻くすべてのものに挑戦し、再定義し、境界線を押し広げてきました。なぜ私たちが同じことをしてはいけないのでしょうか。なぜ過去の伝統や制約に固執し、あるいは再現するだけで、彼らの音楽と精神を受け継ぎ、先へと推し進めようとしないのでしょうか」（「エコーズ・オヴ・ライフ」プログラムより） 1988年、ドイツ・ミュンヘン生まれ。父親はドイツ人、母親は日本人。15歳でイタリアのシルビオ・ベンガリ国際ピアノコンクールに史上最年少の出場者として優勝。ザルツブルク・モーツァルテウム大学で学んだ。10代から注目され、2008年に名門クラシック・レーベル、ドイツ・グラモフォンと契約。世界的に活躍し、11月以降3カ月のスケジュールを見ると、フランス、アメリカ、ベルギー、オランダ、ドイツ、イギリス各国のオーケストラとの共演が組まれている。一方でフランスの高級ジュエリーハウス、ショーメとコラボレーションするなどデザイナーとしても活動している。 ■フィールドのノクターン全曲を録音
