“多様性”ツギハギだらけNHK紅白歌合戦の限界と今後…盛り上がったのは特別枠のみ、2部視聴率はワースト2位
大みそかに放送された「第75回NHK紅白歌合戦」。平均世帯視聴率は第1部は前年と同じ29.0%、第2部は前年から0.8ポイントアップの32.7%で、1部は2年連続の30%割れ、2部は過去2番目の低さに終わった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ワースト記録更新こそ避けられたものの、視聴率の本格的な回復には至らなかった。 【写真】紅白で一気に知名度を上げた新浜レオン 旧ジャニーズ勢の出演がゼロとなる中、TWICE、LE SSERAFIM、ILLIT、TOMORROW X TOGETHERら、今年もK-POP勢が多数出場。また、ME:I、Number_i、こっちのけんと、Creepy Nutsなど、10組が初出場する一方で、THE ALFEEをはじめ、GLAY、イルカなど復活組も出場。さらに、朝ドラ「おむすび」の主題歌を歌うB'zが初出場し、「LOVE PHANTOM」「ultra soul」をサプライズで歌い会場を沸かせた。TVコラムニストの桧山珠美氏はこう話す。 「昨年に比べたら楽しめました。イルカや南こうせつ、高橋真梨子など70代の大御所を出演させ、“団塊の世代”にメッセージを送っているのは感じましたね。74歳のイルカがオーバーオールでなくミニスカートで“絶対領域”を披露していたのにはたまげましたが、あれも同世代へのエールかと。THE ALFEEや玉置浩二も出演していましたが、玉置浩二は、66歳にして、ものすごい声量と毛量で、オーケストラをバックに歌ういでたちは音楽室に飾ってあるショパンなどの音楽家のようでした。一方、前半は、相変わらず若い人向けの“団体さん”ばかりで、歌合戦というよりダンス合戦でしたね(笑)」 ■「番組を成立させることに縛られすぎ」 たしかに今回の紅白は、「あなたへの歌」のテーマの通り、あらゆる世代に向けた歌がごった煮になっていた印象だ。メディア文化評論家の碓井広義氏はこう続ける。 「たしかにK-POPから演歌、懐かしの楽曲までバラエティーに富んでいて、“多様性”の紅白になっていましたが、とにかく番組を成立させることに縛られすぎていて、単に対症療法的に、“あれもこれも並べてみました”という印象ばかりが残りました。この番組はどういう番組なのかという大本の思想や哲学が揺らいでいます。もはや現実的には歌合戦ではなくなっているので、再考すべき時期に来ていると思います」 確かにそれは最後にとってつけたようになされる紅白の勝ち負けの審査にも現れていた。前出の桧山氏の話。 「盛り上がったB'zも、かつてのように演歌を歌いあげ“2代目サブちゃん”への決意を感じさせた氷川きよしも、玉置浩二も、特に説明もないので、なんとなく白組のように感じてしまいますが、実はみんな『特別枠』なんですよね。それに引きずられて“白が勝った”のではないかと。さらに、ドミノとかけん玉とか、勝手に恒例になっていて、歌が入ってこない演出がある一方で、藤井風や椎名林檎とか、明らかに特別扱いされている歌手もいて、そのあたりもなんだかなあという感じです。また司会が歌ったり踊ったりするのもどうなのかと」 碓井氏も「唯一よかった点は、大阪万博を強引にPRするような演出はなく、“国策紅白”にはなっていなかった点です」としながらもこう続けた。 「いろいろな演出があるのはわかりますが、全体的に歌い手へのリスペクトは低く、生演奏も少なかったように感じます。今後も、紅白はやめられないのでしょうけど、放送100年というのなら、これを機に、根本に立ち返っていま一度、その存在意義を考えてみてもいいのではないでしょうか」 “首の皮一枚”でつながった今回の紅白。ツギハギだらけの多様性も結構だが、その存在意義は揺らぐばかりだ。 ◇ ◇ ◇ 「隠し玉」になっていたかと言われるときわめて微妙だと言わざるを得なかったB'z。関連記事【もっと読む】誰もが想定内だった? B'zのサプライズ出演がNHK紅白歌合戦の“隠し玉”にならないワケ…では、その選考基準の不明確さについて伝えている。