a flood of circle、ドミコを迎えたツーマンライブ3日目 極上の宴を繰り広げた夜【ライブレポート】
a flood of circleが多彩なゲストを迎える『A FLOOD OF CIRCUS 2024』が2月9日に東京キネマ倶楽部にて開催された。ツーマン形式で4公演を行うが、この3日目に招いたのは佐々木亮介(Vo/G) がラブコールを送ったことで対バンが実現した2ピースロックバンド、ドミコ。 【画像】『A FLOOD OF CIRCUS 2024』に出演したa flood of circleとドミコのライブ写真 初対面の際、好きだという想いをおもいっきりぶつけたがあまり、ピリつく空気もあったと佐々木は振り返っていたが、その愛はまっすぐに伝わっていたのだろう。ドミコはその独創的で深いセンスを冴え渡らせ、フラッドはロックンロールを軸に様々なエッセンスを取り込む懐の深さを見せつけていき、他にはない極上の宴が繰り広げられた夜となった。 暗がりの中、キング・クリムゾン「Easy Money」が鳴り響き、颯爽とさかしたひかる(Vo/Gt) と長谷川啓太(Ds/Cho) がステージに姿を現してスタートしたドミコのライブは初っ端の「びりびりしびれる」から怪しげでそそる雰囲気が抜群。ドミコはベースレスな2人編成であるのだが、無理やり感がない。 さかしたがループマシンを駆使して音を重ねたり、オクターバーでベース的な低音を加えたり、といった工夫はありつつも生み出されるグルーヴ感自体が凄まじいのだ。趣のある東京キネマ倶楽部の内装、“A FLOOD OF CIRCUS”特有のサーカス小屋的装飾とのマッチングもよく、一気にフロアを埋め尽くす観客も惹き込まれていく。 さかしたがギターを鳴らした瞬間、大きな歓声も湧き上がったサイケデリックな匂いもする「てん対称移動」で会場全体の温度を上げた後に放たれた「ペーパーロールスター」はまさしく圧巻の出来栄え。軽快なリズムワーク、語気を荒げながら〈はあ、どうしようもない〉と歌い上げたところもグッときたが、終盤のセッションがとんでもない破壊力。さかしたと長谷川がお互いを挑発するかのように音を重ね合わせ、そこから突入した大サビは見事な切れ味だった。 言葉よりも曲で、と言わんばかりにMCはほぼなく、とにかく曲を連打。吐き捨てるようなニュアンスで歌を飛ばしまくった「まどろまない」、ミドルテンポでグッドメロディーをしなやかに響かせた「眠れよ、眠れ」と続け、沁みるフレーズや長谷川のコーラスがいいフックとなっていた「のらりつらり」も印象的だったが、暗闇の中で展開された「プトレマイオシー」は陶酔させられた1曲。ムードたっぷりにさかしたがドラマティックに歌い出し、爪弾かれるギター、鼓動を刺激するドラミングが一体となり、得も言われぬ心地よさが広がっていくのだ。 その余韻からシームレスに始まった「深海旅行にて」はハリのある歌声、キレを増すギターにドラム、どこまでもロックンロールであり、サーカス的な多彩なニュアンスがたまらない。もっと駆け上がってくれ、と観客も声を上げ、より熱狂が高まったところへひとクセもふたクセもある「united pancake」を投下し、締めくくりにはさかしたの咆哮も決まった「なんて日々だっけ?」。複雑にフレーズも絡み合うがとっ散らかることなく、狙いは正確。観客を巻き込みながらグルーヴィーでポップなサウンドを展開。最後まで独創的でありながらロックの真髄を射抜くサウンドを披露してくれたのだ。 迎え撃つフラッドは「おはようございます、a flood of circleです」という佐々木の挨拶から「Are You Ready?」と狼煙を上げ、ドミコの妖艶な空気感とつながるような「Flyer’s Waltz」で口火を切る。佐々木が荒々しく〈覚悟出来てんだろ 次は お前が飛んでこい〉と歌ったようにテンションはいきなりマックス。観客も拳を突き上げてその姿勢を称賛し、いい熱気が広がっていく。 もちろん、だからと言って攻め手を緩めるようなバンドではない。〈ここにはまだ飢えてるモンスターがいるんだ〉というアジテート的な口上から始まる「Party Monster Bop」をドロップ。アオキテツ(Gt) もグッと重心を落としてギターを鳴らし、HISAYO(Ba) のベースもうねりを上げ、渡邊一丘(Ds) も観客の興奮を後押しするリズムを叩き出していく。 真ん中には歌い叫ぶ佐々木。これらが一体となるフラッドのサウンドはやはり強い。もっと高みへ、ということなのだろう、佐々木が「生きてるかー!」と呼びかけてフルストットルでぶっ放した「Lucky Lucky」も強烈だった。 また、ここからさらに畳み掛けるように鳴らしたのが「狂乱天国」。ハンドマイクを持った佐々木は歌いながらステージを駆け回り、ひっくり返り、そのままフロアへ飛び込んでいく。「客席に降りたらロックとか思ってそうですよね」と曲終わりに佐々木は自嘲気味に呟いていたが、それぐらい開放せよ、ということなのだろう。常軌を逸するほどの一体感が生まれていたのは間違いない。 中盤に入り、渡邊のコーラスも冴え渡った「月に吠える」を落ち着いたトーンで奏でたが、そういった曲でも熱気が立ち込め続けるのはフラッドの長所であろう。ギターがアコギになろうとも、テンポが落ちようとも、その温度は高いまま。 その証拠に「イライラしてるときはギターを弾くといいよ」と佐々木がつぶやき、言葉通りにギターをかき鳴らし、力強い歌声を轟かせた「くたばれマイダーリン」、軽快なリフで始まりドライブ感満載な「バタフライソング」と続いていったのだが会場はそのまま右肩上がりの熱狂っぷり。イントロのギターで観客が歓喜したゴキゲンなロックンロールソング「青く塗れ」もとんでもない盛り上がりを見せ、コーラスに合わせた観客の歌声も会場中に轟いていた。 ここでようやくひと息入れるように、会場に設置された象のバルーンを「空気が抜けがちでa flood of circleのようだな……どうにか立ってるみたいな(笑)。自分を見てるようで可愛いですね」と笑いを誘いつつ、好きなモノにしか用がないんだと語る佐々木。その真摯な姿もフラッドが愛され続ける理由に違いない。 そんな宣言から続いたのが新曲「キャンドルソング」だった。プロデューサーとして後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)を迎えたこの曲は鮮烈な歌声、思わず声を重ねたくなるサビの気持ちよさを誇り、まだリリース前の新曲ではあるが、手を振り、口ずさむ無数の観客。すでにそれぞれの曲になっているのであろう。それぐらいの浸透力を誇っているのだ。 そして、アクセルをグッと力を入れて踏み込み、ロマンティックで衝動感溢れる「ロックンロールバンド」、折れることなく絶対に咲かせるんだと叫ぶ「花」、どんな瀬戸際に立ったとしても音楽をやっていると観客に宣言してからの「月夜の道を俺が行く」という曲が続いていったのは心が撃ち抜かれる流れ。自らの生き様が投影された曲が持つ力自体もそうだが、声が枯れようとも全力で歌い叫び、常に100%を目指す姿は本当に美しい。 本編ラストはHISAYOが誘ったこともあり、とんでもなく大きなハンドクラップが鳴り響く中で放たれたロックンロールナンバー「I LOVE YOU」。その輝かしさも実に素晴らしかった。 観客に呼び戻されたアンコールでは「Blood Red Shoes」と「The Beautiful Monkeys」をエネルギッシュに連投。ギリギリまでビートを加速させながら最後の締めはカットアウト。そんな潔さもロックバンドのカッコよさなのだ。 この組み合わせだからこその熱気が広がり、ロックの奥深さと旨味に酔いしれることができた『A FLOOD OF CIRCUS 2024』。次は最終日、2月14日のZepp DiverCity(TOKYO)。対峙するのは盟友UNISON SQUARE GARDENだ。奇をてらうことなく真正面からぶつかることは間違いなく、この日も絶景が広がることだろう。 文:ヤコウリュウジ <セットリスト> a flood of circle『A FLOOD OF CIRCUS 2024』2月9日 東京キネマ倶楽部 ■ドミコ 01 びりびりしびれる 02 てん対称移動 03 ペーパーロールスター 04 まどろまない 05 眠れよ、眠れ 06 のらりつらり 07 プトレマイオシー 08 深海旅行にて 09 united pancake 10 なんて日々だっけ? ■a flood of circle 01 Flyer’s Waltz 02 Party Monster Bop 03 Lucky Lucky 04 狂乱天国 05 月に吠える 06 くたばれマイダーリン 07 バタフライソング 08 青く塗れ 09 キャンドルソング 10 ロックンロールバンド 11 花 12 月夜の道を俺が行く 13 I LOVE YOU EN1 Blood Red Shoes EN2 The Beautiful Monkeys
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