草なぎ剛、睡眠を語る

12月9日（土）から京都、福岡、年明けには東京と続く「シラの恋文」の舞台稽古が今、まっ最中です。北村想さんのオリジナル作品で、僕が演じる志羅という役はゴーストライターで、実家が剣術道場で小さいときからやってたから達人といえば達人で。しかも、舞台は海が見えるサナトリウム（結核療養所）…と、設定を羅列するだけでも謎すぎるでしょ（笑）。僕が触れたことのない世界でね。稽古では毎日その都度その都度課題があって、少しずつクリアしながら進化していく。もっといえば、初日があいてからも進化する。舞台はそれが楽しいんです。ぜひ劇場へ見に来てほしいと思っています。 【写真】草なぎ剛、ムーディな部屋でギターを片手に… ■睡眠が人生で一番大事！ そんな僕の毎日を支えてくれているのが「睡眠」。希望としては、夜10時に寝て朝７時に起きたい。ベストはそのぐらい。最低でも６時間以上は寝たいかな。僕のナイトルーティンとしては、寝る前に自分の好きなことをやるんです。ギターを触ったり、古着のチャンネルを見たり、最近は好きな皮ジャンをながめて、オイルをぬってあげたりしてる。忙しくても自分の好きなことに触れるとやっぱり幸せだなと思うし、頭が整理されて次の朝、セリフ覚えがよかったりするんですよね。そんな時間が僕には大事なこと。 睡眠の質にこだわっている僕が一番大事に思っているのは、部屋を真っ暗にすること。そして耳せんをして寝る。一度寝たら音で起きるとかないように。人間って、寝付いたときが一番大事なんだって。特に寝て２時間が一番大事。そこで質のいい睡眠がとれるかどうかで、すごい変わる。長く寝ればいいってもんじゃないわけ。 僕は一番人生の中で大事なものは睡眠だと思ってるんですよね。何度も言ってるじゃないですか。「どんな役作りより、一番の役作りは睡眠だ」と。あれ冗談じゃないから。人生の半分近くは寝てるんだから、寝ることにみんなもっと真剣に考えたほうがいいと思うんです。そう、僕がいつも元気なのは、ちゃんと寝ているからなんです。だからね、もし最近寝れてないなと思ったら１週間でいいから、部屋を真っ暗にして耳せんして寝てみて。全然違うから。朝、快適に起きれるし身体もラクになる。みなさんもやってみてください。 ■手話は本当に大変でした さて、23年の僕は幸せなことにたくさんの役をやってきましたが、ことし最後に放送となるのが「デフ・ヴォイス　法廷の手話通訳士」（12／16土、23土、ＮＨＫ総合）。ろう者の両親の間に生まれた“コーダ”と呼ばれる耳が聞こえるこどもの役で、ほとんど初めての手話をドラマの中では巧みに操らないといけなかったので挑戦でした。ろう者の方とのお芝居する感覚は一番ドキドキしたし、化学反応という言葉がにつかわしい、まさに唯一無二の作品になるだろうなあと。加えて、ミステリー的な謎解きも含まれているんですね。独特の魅力とパワーをもつ作品になったと思っています。 手話は本当に大変でした。撮影合間に30分だけいいですか？と手話練習があったり、撮影が早く終わってもそのあと「手話練習」とスケジュールの紙に小さく書いてあって、帰してくれないの（笑）。本当に丁寧に指導していただきました。手話にも種類があって、「く」とか「に」とか文字みたいなのから「ありがとう」みたいな言葉まで一からすべて教えてくれる感じだったけど、２夜ぶんのセリフ量があまりに多かったので、すべて丸暗記しました。 しかも、指の角度とか表情にも意味があったり、指に付け加える口の表情、リップシンクもあるんですよ。逆に、ここは手だけであえて口は動かさないほうがベターだとか。しかも大きく目を見開いたり、まばたきも入ってたりする。息遣いも大事だから、音声さんが音を拾おうと僕に近寄り過ぎて何度もＮＧになったくらい。そんな中で今回初めての渡辺一貴監督がめちゃめちゃ愛のある方で、大好きになりましたよ。また呼んでもらいたいなと思う監督さんが増えました。 ■思いを伝えるのは簡単ではない 手話以外のミステリー部分では、遠藤憲一さんと初めて共演しました。ふだんはいつもニコニコしてるエンケンさんなんだけど、役柄では元先輩であり、お互い相容れない関係でぶつかるんだけど、いいコンビというか…。う～ん、この感覚どこかで？と思ったら、ドラマ「ＴＥＡＭ」（99年フジテレビ系）の西村（雅彦）さんだ！と思って。ちょっとハードでコワモテな感じがあって、でも結局二人で事件を解決していくバディ感もあるのがなんかうれしくてね。二人のシーンは迫力もあって見どころになっていると思います。 思いを伝えるのは決して簡単なことではないですよね。僕はあれこれ考えずストレートにいくのが一番だと思うけど、このドラマを通じて、言葉にできない思いを手話にして相手に伝えるという、エネルギーみたいなものを感じた。生きていく僕らにとって、何か大切なものが隠されているんじゃないかなと思いました。勇気がもらえるシーンがたくさんできたと思うので、ドラマを見る方にも受け取ってもらえたらうれしいです。 ※「草なぎ剛」のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記 撮影／荒木勇人 衣装協力／SLEEPY SLEEPY