小芝風花×津田健次郎、洋画吹替の面白さを語る 映画『ツイスターズ』アフレコの裏側:インタビュー
小芝風花と津田健次郎が、映画『ツイスターズ』の日本語吹替版キャストとして出演。小芝はデイジー・エドガー=ジョーンズが演じるケイト、津田はグレン・パウエルが演じるタイラーを担当する。スティーブン・スピルバーグ製作総指揮×映画『ジュラシック・ワールド』の製作陣が作り上げた『ツイスターズ』。実際の観測データをもとに、迫力のある映像とサウンドで届ける。竜巻にトラウマを抱えた気象学の天才・ケイトや竜巻チェイサーのタイラーなど知識も性格もバラバラな寄せ集めチームが、無謀ともいえる危険な“竜巻破壊計画”を企て、その驚愕のチームワークで、地球が生んだ最強の巨大竜巻モンスターに立ち向かっていくストーリー。迫力のある竜巻シーンに加え、奥深いストーリーも見どころとなっている。インタビューでは、女優の小芝風花と、声優・俳優と幅広く活動する津田健次郎の2人に本作の魅力について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 ■すごいスピードで台本のページをめくっていく ――小芝さん、海外映画の吹替は2度目の挑戦かと思いますが、吹替はいかがでしたか。 小芝風花 吹替は自分が実際に演じているわけではないので、すごく難しかったです。観ているお芝居を再現するというのがとても難しくて。私が声を入れさせていただいた時は、すでに津田さんの声が入っていたので、津田さんを道標にして臨みました。今回、叫んだりとか掛け合いもめちゃくちゃ速くて、台本もこんなに分厚いのに、一瞬で通り過ぎていくんです。でも、津田さんの声で「あっ! 今ここなんだ」と目印にしながらやっていました。 津田健次郎 本当にテンポは速かったので、すごいスピードで台本のページをめくっていきます。自分がこれまでやってきた作品の中でもかなり速い方だったと思います。また、いろいろな人が同時にしゃべっているシーンがとても多かったので、タイラーの声がどれなのかチェック段階で聞き取るのも難しかったです。 ――津田さんから見て、小芝さんの吹替や演技はどのように映りましたか。 津田健次郎 素晴らしいなと思いました。全く違和感がなかったです。小手先でやっていらっしゃらない感じと言いますか、気持ちでお芝居をされていて、すごく体当たりでやられている感じがとても好感触でした。繊細な表現と勢いのある表現が、パーンと入ってくるといいますか、女優さんとシンクロして、小芝さんの持つフレッシュさ、感情がより伝わりやすくなる感じがありました。 ――お2人が思う、ケイトとタイラーの魅力について教えてください。 小芝風花 ケイトは竜巻に立ち向かっていくヒーローのような方なのですが、竜巻への恐怖、トラウマをもっているんです。勇ましくて格好よいところもありながら、巨大な竜巻を体験して、その恐怖がありながらも立ち向かっていく姿がすごく印象的で、素敵だなと思いました。 ――トラウマがあるのにすごいですよね。 小芝風花 タイラーと出会って「怖いものも乗りこなしていくんだ」という言葉や、いろいろなことが重なって生まれた姿勢で、タイラーの行動に惹かれていきます。たとえばタイラーは、タンブラーやTシャツとかグッズを売って、一見私腹を肥やしているように見えていたけど、それは竜巻の被害で困っている人たちに、食事を配ったりするための資金にしていました。そういう意外なところからケイトは力をもらっていたんだろうなと思います。 ――最初、タイラーはすごく嫌な感じでしたね(笑)。 津田健次郎 グレンは『トップガン マーヴェリック』に出演していたときも、嫌な感じから始まって、最後はガラッと印象が変わりますが、そういうのが本当に上手な方で。物語が進んでケイトとの仲が深まっていく中で、彼の本質が見えてくるところは本当に素敵でした。ケイトもタイラーも竜巻を恐怖の対象としてすごく理解しているんですけど、タイラーは小さい頃から竜巻に惹かれている、美しいものとして捉えているというのも面白いと思いました。ただ、竜巻モンスターと戦うという作品ではなくて、竜巻の写真を撮っていたり、本当に竜巻が好きなんだなと奥深いものがありました。 ■4DXは自分が竜巻の目の前にいるかのような感覚 ――津田さんの声が入ることでどんな魅力がありましたか。 小芝風花 津田さんのセクシーな声とタイラーのギャップがあって素敵でした。それを特に感じたシーンがあって、タイラーが落ち込んでいるケイトを気遣ってピザを持っていくんですけど、ケイトはピザだけ受け取ってドアを閉めてしまうんです。でも、しばらくしてドアを開けたら、タイラーがまだそこにいたのはすごくかわいいなと思いました。タイラーは無鉄砲と言いますか、怖いもの知らずな感じなのですが、好きな人には弱いんだなって(笑)。 津田健次郎 あそこのシーン、すごくいいよね(笑)。 ――劇中で掛かっている音楽もすごくいいですよね。 小芝風花 私もすごくいいなと思いました。特にタイラーたちが竜巻に向かっていくときの音楽にワクワクしました。それを4DX(3Dのその先「体感型(4D)」を演出するための最新劇場上映システム)で体験させていただいたんですけど、迫力がすごくてアトラクション感が増していました。普通に観てもすごいんですけど、4DXだと全身で体感している、自分が竜巻の目の前にいるかのような感覚があり、とても楽しかったです。 津田健次郎 竜巻がやってきて、はちゃめちゃにしてしまうというだけの作品ではないんです。もちろんエンタメの楽しさも存分に入っていますけど、ドラマとしてもしっかりとしていて、風刺もきいていますし、現代的なところもしっかり入っていて、多面的ですごく面白かったです。また、この作品を映画館で観ないで何で観るの? と言えるくらい映画館向きの作品で、大スクリーン、大音量で楽しんでもらうのに値する、超4DX向きの作品です。 ■過去と今の差を出せたら ――竜巻という恐怖に立ち向かっていく作品で、タイラーの「恐怖を乗りこなすんだ」というセリフも印象的でした。お2人が恐怖や不安に立ち向かった思い出はありますか。 津田健次郎 恐怖とはちょっと違うのですが、僕は緊張する現場がそれにあたります。初めての現場は大体緊張しているのですが、それが上手くいったときは、「よし、乗り越えたぜ!」という感覚になります。 ――そういった現場の前日は眠れないことも? 津田健次郎 それが夜はちゃんと眠れるんです(笑)。とても緊張しているんですけど、ベッドに入れば1分で眠れます。なので、ベッドに入るまでに何度も台本を読んだり、確認しています。 ――小芝さんはいかがですか? 小芝風花 それこそ今回の吹替はとても恐怖でした(笑)。準備段階では映像をいただいて台本をチェックして、セリフが進むスピードが速いですし、字幕もなかったので、自分がついていけているのかもわからなくて。それで、吹替がどんな感じなのか、だんだんわからなくなってしまい、映画『ツイスター』(※1996年公開)を参考にして本番に臨みました。 ――本番はスムーズでした? 小芝風花 『ツイスター』で勉強したので、スタッフさんからも「いいですね」と言っていただけて、嬉しかったです。 ――ディレクターさんなどから、アフレコでのリクエストやアドバイスはありましたか。 小芝風花 最初のシーン、過去のケイトを演じるときは、もう少し子供っぽい感じがいいかもとアドバイスをいただきました。それは学生ノリでただただ楽しんでいる感じ、砕けた感じがいいとのことで、それを意識して演じました。私の中ではケイトは昔からしっかりしている人なのかなと思っていたのですが、竜巻が好きといった気持ちを抑えて、いろいろなことを乗り越えてきたので、過去と今の差を出せたらと思っていました。 ――最後に、洋画の吹替の面白さ、やりがいはどこに感じていますか。 津田健次郎 先ほど小芝さんが仰っていたように、自分の芝居ではない組み立て方があるわけで、そこに対する違和感といいますか、僕だったらこうするというのは当然あって、相手の組み立て方とか、表現に寄り添っていくとパキッとハマる瞬間があるので、そういう時に面白いと感じます。誰かの芝居に寄り添っていくというのは、洋画の吹替以外はほとんどないので、人のお芝居の組み立てを身をもって体感する面白さがあるんです。もしくは自分の感覚と役者さんの感覚の違いをどう乗り越えていくか、ただ合わせるだけではつまらないので、そこに自分の感覚をどう入れていくのか、というのも独特で面白いなと思っています。 小芝風花 私はまだ面白さ、やりがいという段階まで達していないのですが、学びはとても多かったです。たとえばセリフをいう時に息とかリップノイズみたいものが多くて、タイラーも「チッ」という音がけっこう入っていたり。自分がお芝居をするときはそういうのはないので、海外の方ならではなのかなと思ったり、吹替はすごく勉強になりました。 ――自分のお芝居へのインプットになっていたりも? 小芝風花 そうですね。海外の方のお芝居は、自分にはない間とか、ナチュラルな感じというのは、なかなか体感できることではないので、どこかでこれが役に立つ日が来るかもしれないなと思いました。 (おわり)