「年金は当てにならないから自分で積み立てる」は大間違い…老後資金1億円をつくる最強の方法
老後資金として、年金はどこまで当てになるのか。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは「老後生活が30年間だとすると、必要額は約1億円になる。年金に頼らずして、これだけのお金を捻出するのは困難だ。賦課方式を採用する年金なら将来的なインフレに対応できる」という――。 【図表】国民年金は約10年で元が取れる! ※本稿は、長尾義弘『投資ゼロで老後資金をつくる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。 ■年金に頼らずに一体何に頼るというのか 老後の生活を安定させるには「収支のバランス」が重要で、それは年金の収入を中心に考えます。 しかし、年金に不信感を持っている人が多いのも事実です。「年金なんて頼りにならない」「本当にもらえるの?」「年金は払い損だ」といった声も聞きます。 では、年金は当てにならないという人にお尋ねします。老後の生活で年金を頼らないのであれば、何を頼りにするのでしょう。 それまで貯めてきたお金を老後資金にするなら、どのくらい必要か計算したことがありますか。 総務省の「家計調査(2023年)」によると、65歳以上の夫婦世帯の生活費は月額平均で約28万円かかります。老後生活が30年間だとすると、必要額は約1億円になります。 単身者の生活費は月額約16万円かかります。老後生活が30年間だとすると、必要額は約5800万円です。 もし、年金に頼れないというのなら、夫婦世帯ならば65歳の時点で約1億円が準備できていなければなりません。もしくは、ずっと働き続ける必要があります。 実際には、年金を受け取ることができるので、1億円近いお金を準備しなくてよくなるのです。 老後において、重要な収入源となる年金です。だからこそ、正しく理解し、うまく使いこなせるようにしたいものです。 年金については誤解も多いと感じます。よくある誤解を解き明かしていきましょう。
■「年金は崩壊する」だから信用しないという指摘 「年金制度はいずれ崩壊するから信用しない」という話をよく耳にします。 年金制度が崩壊したらどうなるかを想像してみてください。 高齢者の約4割が年金だけで生活しています。年金が崩壊すると、その人たちの暮らしは成り立ちません。もし生活保護の対象になったら、生活保護者が急激に増えます。 生活保護の財源は、国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担しています。生活保護の受給者が増えれば、税金の負担がさらに増します。ちなみに、年金の主な財源は、毎月の給与から引かれている社会保険料が大半を占めています。 年金制度が崩壊すれば、生活保護のために税金の負担が大きくなるわけです。政府としてはこの事態を避けたいので、年金制度を崩壊させることはありません。ただ、年金の受給額などは、調整が行われます。 ■年金は払い損になるので、払うだけムダ? 「年金は払った額以上はもらえない。払い損になるから、できれば年金保険料を払いたくない」という意見もあります。とは言っても会社員の場合は、「年金は給与から天引きされているのでしかたがない」なんて考えていませんか? 本当に「払い損」なのでしょうか? では、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人がすべて加入する国民年金で検証してみます。 国民年金の2024年の保険料は月額1万6980円(年額20万3760円)です。40年間納付すると、年金は満額を受け取れます。総支払額は815万400円です。 受け取る金額は、月額6万8000円(年額81万6000円)です。10年間受け取ると816万円になります。65歳から10年間、つまり75歳まで受け取ればほぼ元が取れるわけです。20年で約2倍、30年で約3倍の金額を受け取れます。 したがって、払い損になる可能性はとても低い。むしろお得な制度です。 たしかに10年以内に亡くなれば、損だとは言えます。ただ、死後にお金は必要ありません。使わないのですから、損得も関係ないのです。 しかし、長生きしたときにお金がないと困ります。 年金は長生きのための保険なのです。