WurtS、熱狂的なステージに垣間見えた内面性 豪華編成で迎えた初のホールツアーファイナル
SNS上での“実験”を経て、多くのオーディエンスを巻き込む武道館へ
また、中盤には大学を無事に卒業したことも報告。学業と仕事の両立ができた環境への感謝を述べると、「ここからまだまだ楽しい仕掛けがあるんですけど、みなさん大丈夫ですか?」と後半戦開始の合図を下す。ギアをグッと入れて「SWAM」「オブリビエイト」「リトルダンサー」を畳みかけ、一気にフロアを踊らせた。オーディエンスが大きく手を振ったり、クラップを鳴らしたり、DJのウサギがエアギアーを弾いたりしている姿を見ていると、こちらまで思わず身体を揺らしたくなった。 「昔書いた曲を今やるの、すごくいいかなと思ってるんですけどどうですか!?」と前置きして披露したのは「マイティーマイノリティ」。ストレートなバンドサウンドを会場いっぱいに響かせた。本編ラストパートに披露した「MOONRAKER」や「メルト」にはサックス、トランペット、トロンボーンのホーン隊もイン。壮大なサウンドとミラーボールなどの演出で、いつもよりドラマチックな仕上がりに。そしてラストは代表曲「Talking Box (Dirty Pop Remix)」で本編を締めた。 もはやお馴染みとなった、アンコールを求める「分かってないよ」コールに応え、WurtSとサポートメンバーが再登場。ウサギの物販紹介の後に披露したのは、もちろん「分かってないよ」だ。サビではフロアにマイクを向け、オーディエンスたちの合唱を会場中に響かせた。そして最後に10月の日本武道館公演の開催を発表し、ステージを後にした。 音楽知識のなかった大学生が実験的にSNSで楽曲を発表し、コロナ禍を含む5年間でいくつものヒット曲を生み出し、ホールツアーを完走して、武道館公演まで開催するトップミュージシャンになった。元々はSNSという媒体を通じて一方的に楽曲を届けていたが、ライブではオーディエンスと共にライブ空間を作り上げ、互いにエネルギーを与え合っている。マーケティング研究の一環として楽曲を届け始めたことや、ライブでも素顔を明かさない……という情報だけ聞くと無機質なアーティストに思われるかもしれないが、楽曲やMCには温かみのある人間性があふれ出ており、約90分のライブの中でオーディエンスの心の深いところまで音楽の面白さをしっかりと植えつけた。楽曲のリリースやライブという実験を経て、WurtSは今後どのように変化していくのか。引き続き注目したい。
伊藤美咲