英王室を揺るがした"性犯罪事件"。アンドルー王子の「大惨事すぎる」インタビューの裏側とは? 当時の関係者たちが明かす
もちろん、それは物語の半分にすぎない。残りはアンドルー王子の陣営での出来事で、インタビューに応じるべきかどうかを決める際のチーム内の緊張が描かれている。多くの野次馬たちにとっての大きな謎は、なぜ彼らが出演にイエスと答えたのかということだ。 「Newsnight」のインタビューの後、アンドルー王子は国民の嘲笑と嫌悪の対象になった。そのため、王子役を演じることに躊躇する俳優もいたかもしれない。だがルーファス・シーウェルは違った。彼は撮影のたびに4時間かけて特殊メイクを施した。「役に飛びつきましたね。情けない役を演じるのが大好きなんです。(アンドルー王子役が)必ずしも僕に回ってこない可能性もあったけれど、万が一誰か他の俳優がキャスティングされたことを知ったら『なんで僕じゃないんだ!』って悔しがったと思います」と、シーウェルは話す。さらに彼は(英国アカデミー賞受賞者のピーター・モファットによる)脚本がストーリーを単純化しなかったことが重要だと指摘する。 「脚本では王子の動機について、「Newsnight」で放送された以上の知識を持っている、とは主張しませんでした。王子が“自分がやった”または“自分はやっていない”と言うシーンはありません。この脚本は、王子に対してではなく、状況に対して敬意を払っているように感じられました」 シーウェルが演じるアンドルー王子には複雑な部分がある。彼は自分より立場が低い者を邪険に扱いうるキャラクターだが、魅力的で傷つきやすくもある。シーウェルは「Newsnight」のインタビュー映像から受けた印象をこう語る。「この映像は単に“罪を犯している可能性のある人物”ではなく、“人生で初めて異なる現実の世界に直面した人物”の映像です。この不思議な生き物は、それまでいたバブルから抜け出し、違う種類の大気を吸おうとして、窒息しているんです」
インタビュアー役のアンダーソンとアンドルー王子役のシーウェルの鬼気迫る再現には、真の緊張感がある。「部外者として見た場合、あのインタビューの役目は謝罪でした」と、マカリスターは説明する。「(エプスタインとの)友人関係によって起きたこと、そしてエプスタインがどのような人間だったかに対して、王子がひどいと感じていることを示すこと。彼はそれができなかった」 驚いたことに、実際には、アンドルー王子と彼のチームは、このインタビューが自分たちにとって成功だったと考えていた。映画のなかで、カメラが止まった後、王子がメイトリスに宮殿を案内するシーンが登場する。そして、このシーンは実際にあったことなのだ。「Newsnight」にとって、インタビューの放送が許可されるかどうかの連絡を待つあいだ、不安な数日間が続いた。しかし放送後、世間の反応は満場一致でアンドルー王子に残酷なものだった。 サースクは辞任し、アンドルー王子は失職王族として、また百万人のネタのオチとして、なかば無名の存在となった。「Newsnight」にとっては勝利となった。この番組は年間スクープ賞、年間インタビュー賞、年間デイリー・ニュース番組を獲得し、メイトリスは年間プレゼンター賞とロイヤル・テレビジョン・ソサエティを受賞した。 しかし、何より重要なのは、このエピソードが精査の力を実証したことだ。
Harper's BAZAAR JP