2リッターV8ターボエンジン搭載のフェラーリ|ハチマルユーロー Volume.25|1986年式 フェラーリ GTS ターボ
208系の最終進化版であるGTSターボ
今回ご紹介するのは、208系の最終進化版であるGTSターボ。一見したところ同時代の328GTSと変わらないようにも映るが、左右後輪の直前には兄貴分512BBのようなNACAスクープが設けられ、その高性能を暗示しているかのようである。 実際に走らせてみると、見た目の印象を裏切らない高性能を実感させる。254psというパワーは、ヨーロッパ仕様の328よりも16ps劣る反面、トルクは33.5㎏‐mと、328の31.0㎏‐mを上回る数値を示す。 とはいえ、超フラットトルクが当たり前となった現代のターボ車とは違い、この時代のターボ、しかも生粋のスーパーカーゆえに操縦感覚は明らかに手強い。あらゆるスピード域でも扱いやすい自然吸気の328と比べてしまうと、低速域ではかったるいことこの上ない。ところが、ターボ過給の立ち上がる4000rpm付近からの豪快な加速感やサウンドに「襲われる」感覚は、ハチマル時代最高の伝説たる「F40」をもほうふつとさせる。 80年代のカーグラフィック誌では、F40の原型となったプロトタイプ、かの「288GTOエヴォルツィオーネ」のサウンドを「悪魔的快音」と評していたが、GTSターボでもその特質は十分に味わうことができる。しかも、簡単な操作で取り外すことのできるデタッチャブルトップをオープンにしてしまえば、青天井のもとで爽快な走りと小気味よいエキゾーストノートが味わえる、珍しい一台なのである。
F40よりもはるかに少ない! 日本国内で極めて希少な存在となったGTSターボ
公式記録によると6068台が作られたという328GTSはもちろん、F40の1311台よりも遥かに少ない台数しか作られなかったGTSターボ。 さらに日本への正規輸入が行われなかった結果として、国内では極めて希少となった伝説的スーパーカーに触れ、その特質を堪能できたことは、フェラーリの総代理店で社会人としてのスタートを切り、328とともにフェラーリの運転を学んだ筆者にとっても終生忘れ難い記憶として刻まれた。V8フェラーリ史上、最も小さな排気量を持つこのクルマには、それだけの魔力があると思うのだ。 1986年式 FERRARI GTS TURBO ●全長×全幅×全高(㎜) 4255×1730×1128 ●ホイールベース(㎜) 2350 ●トレッド(㎜) 1485/1465(前/後) ●車両重量(㎏) 1275 ●エンジン種類 ミドシップ横置き・90度V型8気筒 ●総排気量(㏄) 1990.64 ●内径×行程(㎜) 66.8×71 ●最高出力(ps/rpm) 254/6500 ●最大トルク(㎏-m/rpm) 33.5/4100 ●ブレーキ ディスク ●タイヤサイズ(前・後) 205/55 VR 16 225/50 VR 16 初出:ハチマルヒーロー vol.46 2018年 3月号 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
【関連記事】
- 沖田への思いと駆けるディノ【前編】実業家谷田部が与えしマシン|サーキットの狼世代へ スーパーカーの饗宴|ディノ246GT
- ミニみたいだけれどミニじゃない!? ピニンファリーナのデザイン。成功を収めたBMCの次なる一手|1963年式 モーリス1100【1】
- テスタロッサより低いエンジン搭載位置。中身は大規模変更だった512TR|1992年式 フェラーリ 512TR【1】
- スポーツカー史上有数のロングセラー【1】その28年間のスタート|1991年式 ロータス エスプリSE|ハチマルユーロー
- 日本における欧州車ブームを牽引した、ワールドスタンダード|1991年式 フォルクスワーゲン ゴルフ GTI 16V Vol.1|ハチマルユーロー