初めて手に入れたポンコツのビートルは「自由の翼」だった! 【クルマのプロに聞く! あなたにとってのクルマとは? まるも亜希子編】
クルマを乗るきっかけになったのは「通学」でした
私にとってクルマは人生の相棒であり、マイルームであり、レッスン室であり反省会の場であり、カラオケボックスにも更衣室にも仮眠室にもなり、家族や友人たちとの思い出を作ってくれる大事なアイテムです。そして、初対面の人とも打ち解けるきっかけを作ってくれるものであり、人や場所や景色、グルメなど、思いもよらない出会いをくれるものでもあります。 【写真】まるも亜希子さんが初めて手に入れたフォルクスワーゲン・ビートル しかしじつは、幼い頃からとくにクルマに興味があったわけではなく、18歳になっても免許を取るつもりもなかったものでした。出身地の千葉県船橋市も、高校時代を過ごした東京でも、自転車とJRと地下鉄があれば、移動には何の不便も感じていなかったのです。 それが一変したのは、大学への通学のため地方でひとり暮らしをするようになってから。そこでは電車は1時間に数本しかなく、大学の最寄り駅からでもバスで30分もかかる。朝夕の渋滞時にはその倍以上の通学時間がかかってしまい、講義に遅刻しまくってあわや単位を落としそうに! そこで友人に勧められたのが、マイカー通学だったのです。「裏道を走ってくれば、すっごくラクだよ」と言われて一大決心。 それからは教習所の費用と初めてのマイカー購入費用を、アルバイトでせっせと貯める日々でした。半年くらいかかって、ようやく免許とマイカーを手にしたのですが、まわりの先輩たちのちょっと変わったクルマ趣味に影響されて、初めてのマイカーは激安だったフォルクスワーゲン・ビートル。 年式不明だけど恐らく1974年式で、リヤフードの内部にキャブエンジンが収まり、オートロックもエアコンもパワステもない、時代遅れのポンコツでした。
ビートルが与えてくれた「自由の翼」
でも、そんなポンコツが私にくれたものは、まさに「自由の翼」だったのです。通学がラクになっただけでなく、電車がない深夜だって早朝だって、いつでも好きな時間に好きな場所へ行ける。道が続くかぎり、私はどこへでも行けるんだと思っただけで、夢と希望とワクワクがどんどん膨らんでいったのを覚えています。 イヤなことがあった日も、不安に潰されそうになったときも、クルマという半プライベート空間に身を置き、流れる景色を見ながらドライブしていると、スーッと心を鎮めることができました。ときにはワンワン号泣したり、友人と深く語り合ったり、海や夜景や山並みに癒されたり。自転車や地下鉄じゃ絶対にできないことが、クルマにはできるんだ。そう実感できたことが、いまの私の原点になったと思います。 こういう気持ちをまだ知らない人たちに、クルマの魅力として伝えたい。不自由な毎日を過ごしている人や、自分を取り戻す術を探している人たちにも、クルマがそれを助ける相棒になってくれることを知ってほしい。そんな想いが、自動車メディアの世界に飛び込むきっかけになったのです。 時代は変わり、カーボンニュートラルや原油高などさまざまな要因で、クルマは悪者にされてしまうこともある現代。たしかに「移動」という目的だけで考えれば、クルマよりももっと賢く、経済的で、地球環境のために良い手段がたくさんあるのは事実です。目的に合わせてそれらを選択することによって、少しでもSDGsに務めることは現代を生きる私たちの義務。 だけど、クルマには「移動」だけでなく、人生を豊かにしたり、家族や仲間たちとの絆を深めたり、明日への原動力を作ってくれたりといった、多くの魅力があると信じます。それらを未来の人たちに残せるように、クルマのある人生をつないでいくお手伝いをすることが、私からクルマへの恩返しかなと思っています。
まるも亜希子
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